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スパークのお知らせと新刊サンプル



passage(ネズ紫新刊サンプル)y



COMIC CITY SPARK 7発行の新刊です…!
壁崩壊後から四年。久しぶりに二人で西ブロックを訪れるネズミと紫苑のお話。甘々です。
「Adagio」「After Eden」「Lento」に続くシリーズものですが、この一冊でもお読みいただけます。
◆COMIC CITY SPARK 7参加 東ホールウ01b 長屋&アイツウシン 
またまた長屋さんと合同サークルにしていただけましたv 
さつきさんありがとうございます、そして売り子さまのMさま本当にありがとうございます!
本人たちは諸事情により今回も参加できません、すみません;;
●(NO.6本)※黒バス本の販売もあります。
【新刊】「passage」…400円
【既刊】
「はじまりの朝とさよならの月夜」(残り4冊これでラストです)…900円
「Lento」(残部これでラストです)…600円

◆(書店通販)とらのあな様→http://www.toranoana.jp/bl/article/04/0030/07/44/040030074458.html






「礼を言わなきゃいけないな。あんたらが道を整備してくれたから、バイクに乗って喋っていても、こうして舌を噛まずに済む」
平らな道を滑走しながら、ネズミが何気なくそう言った。労うようにかけられたその言葉が、とても誇らしく思える。
かつての西ブロックは瓦礫だらけで、それを避けて歩くだけでも、体力のない身体には結構堪えた。
道もほとんどは凸凹の穴だらけで、整備はまったくされていなかった。紫苑も何度か抉れた地面に足を取られ、転んで軽い捻挫をした。
その都度、蔑むようにネズミに言われたものだ。
これだからNO.6の人間は。
そこに穴が空いているとわかっていても、避ける知恵すらないのか。それとも、穴の方が自ら避けてくれるとでも思ってるんじゃないか。ああ、まったくとんだ馬鹿どもだ。おぞましい。不幸も不運も一生涯、自分の身の上に落ちてくるなど考えもしないのさ。
NO.6を心の底から憎んでいるネズミの言葉は、時に強烈な刃となって、紫苑の心に傷をつけ、血を流させた。
まるで、紫苑がNO.6そのもの、もしくは申し子であるかのように、憎しみを叩きつけた。
だけど今は、そんな言葉の数々が少し懐かしい。
彼がそばにいなかった4年の間は、特にそれを痛感していた。紫苑にそんな辛辣な言葉をかけ、驕りや慢心に気付かせてくれる人は、誰一人いなかったから。



「あんた、ここで少し待てるか?」
「え? うん、いいけど」
劇場の前で停められたスクーターを降り、紫苑がヘルメットを取って、懐かしい劇場を見上げた。客席の広さは以前とさほど変わらないようだが、見た目だけは随分と立派になっている。
ネズミが警備員の1人を呼び寄せ、紫苑の間近に移動させた。何かあったらすぐ呼ぶようにと命じ、足早に劇場の裏口へと向かう。
劇場の正面入り口の上に掲げられた大看板には、銀髪のネズミが大きく描かれていた。
なるほど。確かに格好いい、けど。
紫苑が、やや複雑な胸中でそれを見上げる。
かつて此処には、イヴの巨大な看板が掲げられていた。西ブロックでイヴといえば、女形の役者で有名だった。長い黒髪、薄く化粧した儚げな美貌。男たちは『彼女』の歌声に、うっとりと酔いしれた。力河もそんなファンの1人だった。
そして、今。
銀色の髪の彼は、今、まったく別人として舞台に立ちながら、堂々とイヴの名を使っている。
イヴを名乗りながら、だが、しかし、誰も『彼』と『彼女』が同じ人間だなんて思わないのだ。いったいどんな魔法を使っているんだろう。紫苑が考える。
銀色の髪に上品な物腰、スタイリッシュな眼鏡姿の彼を、誰も以前ここにいたイヴとだぶらせない。
劇場の客も以前とはカラーが少し変わったようだが、同じ名、同じ人間が同じ舞台に立っていて、客にそれを気づかせないなんて、まったくすごいことだと思う。
天性の役者。
力河は、天性のペテン師だとよく言うけれど、あながちそれも間違いではない気がする。
彼の歌と演技に魅了され、引き込まれるように、人は虚偽の世界に足を踏みいれる。あたかもそれが現実であるかのように。
「よう、紫苑じゃないか!」
看板を見上げていた紫苑を見つけ、中から出てきた小太りの男が笑顔で声をかけてきた。あの人狩りで生き残った、運の良い1人だ。潰れかけの劇場を何とか立て直し再生し、今またイヴという看板役者を得て、最近では左団扇で笑いが止まらない、という噂だ。
「こんにちは。支配人。お久し振りです」
「紫苑こそ、元気そうで何よりだ。ああイヴのヤツならすぐ来るから。もうちょっと待っててくれ」
言われ、肯き、それから劇場の周囲にいる若い女性たちにちらりと目をやる。
「あれってイヴのファンですか? 彼は、今日は休みの筈ですけど」
「そうなんだがな。わかってて、ああやって毎日通ってくるんだよ。熱狂的な女性客が増えたおかげで、警備の男も大勢雇わにゃならんし、商売上がったりだ」
言いながら、血色のよい艶のある頬をにまりとさせる。
「その分たくさん、彼女たちがお金を落としてくれるんだから良いじゃないですか」
「まあ、そりゃあなあ」
「なので、出演料アップの方向でお願いします」
言って、にっこりする紫苑に、世慣れてきたなあ、あの天使が…と支配人ががっくりと肩を落とす。
「天使とは言い過ぎだ、支配人。それに、元々紫苑はこういう奴さ」
「ネズミ…!」
紫苑が驚いて振り向くのと同時に、少し離れた交差点からこちらを窺っていた若い女性らから、黄色い歓声が湧き上がる。ネズミがそれをちらりと見、軽く目配せをすれば、ますます彼女らは色めきたった。が、サービスはそれっきりで後は見向きもせず、脇に抱えた箱をスクーターの足元に置く。
「待たせたな」
「用は? もういいのか。その箱は?」
問えば、後でなと、あっさりはぐらかされる。まるで帽子でも入ってそうな、高さ30センチ程度の円筒状の箱だ。
「状態はどうだ? 長い間しまい込んだままだったからな」
「あぁ、問題ない。ところで、本当に貰っていいのか?」
「もちろん。もともとお前のものだからな」
「それはありがとう。では遠慮なく」
ポーズをつけて微笑を浮かべ、支配人に礼を言い、乗れと紫苑に顎で命じる。
後に、紫苑に『ブラックサンダー号』と名づけられるその稲妻のマークの入った大型スクーターに、紫苑が跨がるのを確認して、ネズミがちらりとファンの女性らに視線を流す。
そして、明らかに妬心を抱いているとわかる不機嫌そうな紫苑の顔を見るや、微笑を浮かべ、その顎を指で掬った。顔を接近させる。
「そんな顔をするな」
至近距離で囁かれ、紫苑の顔が一瞬で赤面した。
「え、な、何、ネズ…」
その言葉の終わりを待たず、優雅なしぐさで唇が塞がれる。息を飲む気配がした。
次の瞬間。大通りの交差点に、女性らのかん高い悲鳴と絶叫がこだました。




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