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きみが風邪をひいた(SCC新刊サンプル)

5/4 SUPERCOMICCITY21発行の新刊サンプルです。
風邪ひきネタ3本。「きみのそばできみと見つめる」「きみに光が降り注ぐ」再録。
書き下ろしはその続編で、紫苑の風邪がネズミにうつっちゃったお話です。
お風呂上りの人肌でネズミをあたためようとして、裸のままベッドに入った(天然)紫苑が、熱で抑制の効かなくなったネズミに…。
サンプルにはありませんが、R18内容も含みますのでご注意くださいませ。

●とらさんで書店販売の予約がはじまりました→
http://www.toranoana.jp/bl/article/04/0030/04/12/040030041276.html








 
ストーブの上で鍋がコトコトいっている。
その鍋をかき混ぜながら、紫苑が小ネズミたちと楽しげに何事かを話している。
ランプの火があたたかく揺れている。
そんな光景をしみじみ見つめ、ネズミが静かに眼を閉じた。
誰かが傍にいてくれる深い安堵。
これに慣れてはいけない。
慣れてしまっては、取り返しがつかなくなる。
失うことを恐れてしまう。
思いながらも同時に、もう手放せなくなっている、そんな自分を再確認した。
「さて、と。ごはんができるまでもう少しかかるし。先に薬を呑もうか、ネズミ」
「…嬉しそうな顔しちゃって」
おどけて言うネズミに、木の椀に冷ました緑の液体を流し込み、紫苑がベッドの脇に運んでくる。それを両手に持ったまま、ベッドの端に腰かけた。
「ていうか、あんたそれ。本当に熱さましの薬草だろうな?」
「勿論だよ。ちゃんと確認して買った」
「毒草じゃないことを祈るぜ」
「なら、ぼくが先に毒味をするよ」
えっと思うなり、紫苑がそれを自分の口に含んだ。途端に何とも言えない複雑な表情になって、眉間をぎゅっと寄せ、深い皺を刻む。
そして、ひどい顔に笑いを堪えているネズミをむっと睨むと、その顎に手を添え、ゆっくりと上体を倒した。
唇がふれ合う。
ネズミが腕を伸ばし、紫苑の後頭部を引き寄せた。
ぴったりと合わされた唇の狭間から、苦味と渋味のあるどろりとした液体が流し込まれる。ネズミが躊躇わず、嚥下した。喉が上下したのを確かめて、紫苑がほっとしたように唇を離す。
「うわぁー、やっぱり苦い! きみ、よくこんなのすぐに飲み込めるね!」
「自分が呑ませておいて、よく言うぜ」
「だってさあ、うわー、舌が痺れてる」
「まじで毒草だったら、あんたもおれもやばいな」
「本当だ。心中だね」
からかうように言うネズミに、紫苑が両の肩を持ち上げてくすくすと笑む。
だから嬉しそうに言うな、とネズミが睨むように紫苑を見上げ、ぎゅっと鼻をつまんだ。
「んぁ、痛いよネズミ」
「こんなところで男と心中してたら、あんたのママが泣くぜ。まったく」
呆れたように言う。
「それに、おれは、あんたみたいに苦いって文句言わないからな、別にわざわざ口移しにしなくても飲むぜ」
ネズミの指摘に、やや慌てた素振りを見せて、紫苑が微かに赤面しながら視線を逸らす。
「い、いいんだよ、きみもしてくれたし。ぼくも、そうしたいんだ」
その応えに、ネズミが意味深に半眼になって、ちろりと横目で紫苑を流し見る。
「へーえ?」
「な、なんだよその目は」
「あんたって、意外とやらしいな」
意地悪い口調でとんでもないことを言われて、紫苑がぎょっとなる。
「な、なんでそうなるんだ!」
「おれにキスする口実が欲しいんだろ?」
熱っぽい手に腕を捕われ、口説くかのように艶っぽく言われ、紫苑の全身がかあぁっと一気に真っ赤に染まった。腕を振り払い、逃げるようにベッドから立ち上がる。
「ば、ばか。そんなわけないだろ…!」
焦る余り椀を投げ落としそうになる紫苑に、ネズミがそれをおっとと手を伸ばして取り上げ、上体を起こした。
「おい、危ないだろ。もういい。自分で飲むさ。あんたのおかげで余計熱が出そうだからな」
「ど、どういう意味?」
「あんたのキスが、へたくそ過ぎて」
「なっ…! へたくそで悪かったな! そもそもキスじゃない、薬を飲ませているだけなんだからな!」
吐き捨てるなり、紫苑が今にも頭から湯気が出そうに真っ赤になったまま、ベッドを離れてストーブの上の鍋に向かう。
まったく人が心配してるのに、きみときたらどこまで意地が悪いんだ!とぶつぶつ言う背中に、くすりと笑んで、ネズミが立てた片膝の上で椀を抱える。
「紫苑」
「…」
「しおーん」
「何だよ、まだ、何かあるのかっ!」
一度は無視したものの、再度呼ばれた名にキッと紫苑が振り返る。その顔があまりに可愛いらしくて、もう一言何かからかってやりたい気分になったが、さすがにやめた。怒らせたいわけじゃない。
「―ありがとう」
ぼそりと言って、ネズミが一気に椀の中の液体を呑み干す。
「え…」
意表をつかれたように礼を言われ、紫苑が釣り上がっていた眉といかり上がった肩を、所在なげにゆっくりと下ろした。
「あ、ううん、そんなこと…」
 頬がますます真っ赤になる。
語尾は勢いを無くして、恥ずかしそうにフェードアウトした。






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