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【通販開始】Peaceful Gardenサンプル

ぷろく2新刊コピー本です。
既刊の「After Eden」の続きのようなお話ですが、これ単独でもお読みいただけます。
ロストタウンで一緒に暮らし始めたネズ紫が終始いちゃいちゃしているお話です。
A5.20ページ。

peaceful garden-rgb

自家通販お申し込みは、↓のアドレスから。数に限りがありますので、できるだけお早めにお願いします。
http://www.chalema.com/book/ai_tsushin/
お申し込みいただくと自動返信メールが届きますのでご確認ください。
(届かないようでしたら通販ページの(お問い合わせ)よりご連絡ください。念のため、迷惑メールフォルダもご確認ください)
Yahooメールが受け取れるようにしておいてくださいねv






紫苑。
あなたにすべてを託す。

沙布は、エリウリアスは、そう言った。
そして、ネズミの命を助けて逝った医師もまた、死の間際にこう言った。
きみに託す。きみたちに託す。頼む。もう二度と、NO.6を、こんな都市を創らないでくれ。頼む。
最後は懇願で終わった。

ネズミは、任せては駄目だと言った。誰かに任せてはだめだ。あんたがやらなきゃだめなんだ。
逃げるな。背を向けるな。あんたが戦い、成し遂げる仕事がここにあるんだ。
そう言い残して旅立った。ついに一度も振り向いてはくれなかった。

ネズミの後ろ姿を見送った、あの日の碧空。
そのあざやかな空の碧さが、後に、紫苑に『喪失』をイメージさせる色となった。

夢を見た。何度も同じ夢を。
碧空を見上げたまま、落下して行く夢だ。
どこまでも落ちて行く。
救いを求める手に差し伸べられる手はなく、縋る手を掴み引き上げてくれる手もない。
孤独な寒さの中、ただ落下していく。
やがて、辿りついたのは、深い海の水底だった。
海底まで深く沈み、瞳を見開く。息が出来ない。
ゴボ…ッと水が入り込んでくる。喘ぎ、藻掻く。
喉を押さえる。肺が圧し潰される。
こわい、痛い、苦しい、誰か、助けて。

もう無理なんだ、ぼくには無理だ。背負うなんて、無理だった。
きみがいない。
きみがいない世界で、ぼくはこんなにも脆く弱い。誰かを救うどころか、一人で立っていることさえおぼつかない。
罵ればいい、嘲笑ってもいい。
だけどこれが現実で、そしてぼくの真実だ。

ネズミの傍らで一時あれほど苛烈であった己の存在が、不確かなものになっていく。
希望も理想も胸にあった筈なのに、そのすべてが今は遠い。遠ざかっていく。ぼくの望みは何だろう。いったいどうしたいんだろう。
わからない、わからないんだ。もう笑い方もわからない。泣き方も忘れてしまった。もうぼくは。
眠い、もう休みたい。いっそ明日の来ない眠りでもいい。
だけど。

きみは言った。
生きて背負え、と。

だから、逃げ出すことは赦されない。
人を殺めた罪も、沙布の死も、死んでいったものたちの遺志も。
すべて受け止め、生きていくことが、ぼくの贖罪、なのだから――。

大丈夫だよ、ネズミ。沙布。
ぼくは、まだ頑張れる。
頑張らなくちゃいけないんだ。
これはぼくの使命であり、そして償いでもある。
だから。
弱音を吐いてちゃ、いけないんだ。

大丈夫。まだぼくはがんばれる。
ネズミ、きみともう一度出逢うために、頑張るから。
だから、だから。

出来れば、そろそろ会いに来てくれないかな。
寂しいんだ。とても、寂しい。
弱いって、甘ったれだって、笑ってもいい。
きみに会いたくて、会いたくて、会いたくて、ぼくは…………

沈んだ水底から、遠い天上の光に向かって、懸命に両手を伸ばした。
苦しい息の下、溺れそうになりながら、ただ、懸命に手を伸ばす。
せめて指の先だけでも、あの光にふれたくて。

(ネズミ――……!)





「うわあぁあっ」
自身の叫びとともに、どすん!という落下音が部屋に響いた。衝撃を受け止めた背中と、床でしたたか打った後頭部が痛い。じんじんする。薄目を開けて、世界が逆さまになっていることを確認した。まだベッド上に引っ掛かっていた片足を下ろし、床の上でもそもそと体勢を直す。
「いたた、あー、もう何だよ」
誰に言うともなく、頭を押さえながらぶつぶつと文句を言えば、頭上でくすりとさもおかしそうに笑う声が聞こえた。はっとなる。
「えらく派手なお目覚めだな。あんた、いつもこんななのか?」
「へ?」
笑いを含んだ声に、きょとんと見上げた。ぱちぱちと数度瞬き、目をこする。
「ネズミ…?」
目の前に、デニム地のエプロン姿のネズミが腰に手を当て、紫苑を覗き込んで笑っていた。
「…えっと」
夢、かな?
いや、それにしてはあまりにリアルな。
それはそうと、あれ? 此処どこだっけ?
室内を見渡しながら考える。自分の部屋でないことだけは確かだが。
カーテンのない大きめの窓から、朝の日の光が差し込んでいる。それが、家具もほとんどない殺風景な部屋をあたたかく見せていた。
床の上には、既に本の山が幾つか、堆く積み上がっている。
未だ寝呆け顔の紫苑に、からかうようにネズミが言った。
「なんだ、あんた。まだ寝ぼけてるのか? なら、いいものを見せてやろう」
ほらと目前に突き出された目覚まし時計を、紫苑の瞳が束の間じっと見つめる。そして、時間を確認するや、その顔は見る見る引き攣った。瞳が驚愕に見開かれる。
「え…? ちょ、待っ、え!? 嘘っ、うわぁああっ!」
叫ぶなり、あたふたとパジャマを脱ぎ捨て、紫苑が着替えを探して室内を右往左往する。
「えーと、スーツどこだっけ、スーツ」
「そこだ。ハンガーに掛けておいたぜ?」
「あ、ありがとう。えっと、シャツは? シャツとネクタイ!」
「シャツはクリーニングから返ってきたまま、机の上。ネクタイはダイニングの椅子に引っ掛かってたぜ。何だ、あんた。脱いだら脱ぎっぱなしかよ。案外、だらしないな」
「だって、ぼくが片付けようとしたら、そんなことは後にして、とにかくベッドにってきみが…!」
昨夜、眠りにつく前の諸々のことを鮮明に思い出し、紫苑が服を身につけながら真っ赤になる。その一部始終を観察しながら、ネズミが愉しげな口調で言った。
「おれのせいか? ま、ともかくこれで目は覚めただろ」
「覚めたよ! というか、なんで起こしてくれなかったんだ! あーもう遅刻寸前じゃないか!」
「起こしたぜ? 今」
「遅いよ!」
「そいつは悪かった。ともかく、さっさと着替えて降りて来い。朝食、あんたの分も出来てるぜ」
「だけど、もう時間が…」
「駄目だ、朝食を抜くと1日持たない。仕事にならないぜ。あんた、ただでさえも体力が無いんだ。ちゃんと食ってから出掛けろ」
ネズミの口調が、叱りつけるように厳しくなる。もう少し言いようがあるだろうに。こういうところは、昔からちっとも変わってない。紫苑が渋々肯いた。
「きみって、母さんより厳しいな」
「あんたのママがやさしすぎるんだ。おれはそんなに甘くないぜ。ほら、早くしろ」
「わかってるよ」
シャツの袖に手を通しながら、紫苑が、階下をおりていくネズミの後に続く。古びた階段がギッ…と軋んだ音をたてた。ふいにネズミが振り返る。
「あぁ、目玉焼きとスクランブルエッグ、陛下はどちらがお好みですか?」
「目玉焼き! あ、両面焼いてくれ」
口調とは裏腹の可愛いらしいリクエストに、ネズミがほくそ笑み、腕を胸にあて仰々しく応えた。
「仰せのままに」




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