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「After Eden」新刊サンプル(R-18)


(A5/60P)
NO.5で再会を果たしたネズミと紫苑。共にNO.6へと戻ることにしたネズミには計画があった。
ネズ紫・ハッピーエンド。
前作「Adagio」の続きのお話になっていますが、この本単独でもお読みいただけるように書いています。

◆12/30 書店通販始まりました◆
とらのあな様→http://www.toranoana.jp/bl/article/04/0030/01/92/040030019216.html
K-BOOKSさま→http://www.c-queen.net/ec/products/detail.php?product_id=90670

■1/8コミックシティ大阪87発行(3号館U-47a/アイツウシン)
■「Adagio」もイベント用に少しだけ再版します。通販分はないかもしれないです。ごめんなさい。
■当日は、さつきりゅうじ様(http://www.pixiv.net/member.php?id=3215858)の新刊と既刊「初恋」を委託させていただきます。






(サンプル1) 


すっかり自分の家のように、堆く本が積み上げられた室内は、西ブロックのネズミの家を彷彿とさせる。
あたたかく、赴きのある部屋。
そして、小ネズミたち。
ツキヨもここにつれてきてやればよかった。ハムレットたちとの再会をきっと喜んだだろうに。
だけど、家を出掛けた時は、まさかこんなふうにネズミと再会できるとは夢にも思っていなかったのだ。
ただ、差出人不明の舞台チケットにイヴの名を見つけ、公演の日時を確認するや否や、ろくに旅の準備もせず、空港へとタクシーを走らせた。当日の朝に開封した郵便は、紫苑に逡巡する余裕さえ与えなかった。〈つまりネズミの作戦は、まんまと成功したというわけだ〉
「食事を持ってきた。あんた食べられそうか?」
片手に持ってきたトレイをテーブルに置くと、ネズミがベッドを振り返る。
見れば、トレイに乗せられたスープ皿から白い湯気が上がっていた。紫苑の腹がきゅう…と控え目な音を立てる。
「腹の方が先に返事をしたな。正直でいい」
「いや、その、これは」
赤面する紫苑に、ネズミがどこか安堵したような笑みを浮かべ、近づく。ベッドの端がその体重を受けて、ギシ…と僅かに沈んだ。傍に来たネズミを、布団の中から紫苑が見上げる。
我ながらゲンキンだと思うけれど。ネズミの顔を見た途端、先ほどまでの杞憂はすべて忘れてしまった。
それどころか、今がいつで、ここがどこで、なぜこうしているのかさえ、一瞬見失う。
まるで、西ブロックの部屋で、ネズミのベッドで目覚めた朝のうちのどれか一日に戻ってしまったような錯覚に、しばし陥る。が、部屋の薄暗さが地下特有のものではなく、窓のブラインドによって光を遮られたものだと理解して、やっと現実に立ち戻った。
「起きられるか?」
「うん、たぶん」
紫苑が、じわじわと身体を起こす。先ほどの強烈な痛みを思い出して、つい慎重になる。場所が場所だけに、ネズミに痛みを訴えることもできない。恥ずかしくて。
ベッドに身を起こして腰かけるなり、くらりと軽い眩暈に襲われて、傍らのネズミに凭れた。背後から肩を抱くように支えられる。力強い腕に、紫苑がほっとしたように目を閉じた。
よかった。本当にネズミだ。今、ここにいる、確かに。夢じゃない。
「大丈夫か?」
耳元で問われ、はっとなる。顔を上げると、ずっと見たいと焦がれた濃灰色の瞳がすぐそこにあり、どきりとした。
「うん、平気。あ、いいにおい…」
紫苑が、首を伸ばすようにして、テーブルに置かれた皿を覗き込む。懐かしい匂い。紫苑が目を閉じ、鼻をくん…と動かした。犬のようなしぐさに、ネズミが口の端を持ち上げる。
「おれの特製スープだ。下の店の厨房を借りて作った」
「ええっ、いいのか。そんなことをして」
紫苑が驚いたようにネズミを見る。下の店というのは、昨日一緒に夕食を取った一階のレストランのことだろう。店長とは懇意にしていると聞いてはいたが、厨房の出入りまで許されているとは。
「もちろん、勝手に入って使ったわけじゃないぜ? 店長には了承済みだ。味見をさせたら、なかなか評判が良かった」
「すごい。コックでも食べていけるな、きみなら」
「お褒めに預かり光栄だけどな、そういうことは食ってみてから言ってくれ」
「きみのつくるスープが美味しいのは、ぼくが一番よく知ってる。食べなくてもわかるよ」
「そうか。なら、匂いだけでやめておくか?」
「えっ…? って、どうしてきみはそう…」
意地悪なんだ、と睨みつけるより早く、紫苑の腹が今度はぐう…っと盛大な音を立てた。冗談じゃないと抗議しているかのようなタイミングに、ネズミがくくっと吹き出した。
「悪かった。あんたの腹が怒っている。さあどうぞ、遠慮なく召し上がれ」
「遠慮なんかしてない…」
笑いながら言われ、赤面した紫苑が皿の乗ったトレイを受け取り、膝に乗せる。手渡されたスプーンで一口掬い、口に運べば、あまりにも懐かしい味に胸がぐっと詰まった。ずっと食べたかった、あの味だ。
「どうだ?」
涙ぐむ紫苑の横顔をやさしい瞳で見つめ、ネズミが問う。
「うん…うまい」
しみじみ頷いて、紫苑がまたスープを掬う。淡白だがやさしい味。ほどよいあたたかさに、胸の奥にあったしこりが溶け出していくようだ。
ネズミと別れてから、頑なになっていた心の結び目がやんわりとほどかれていく。心地よい。
「やっぱりきみの作るスープはうまいな」
「おれは、あんたの作るスープの方が好きだけどな」
さらりと返されて、スープをすすりながら紫苑が見上げる。その眦に、ふいにネズミの手が伸ばされた。
「どうした? 涙の跡がついてるぜ」
頬を掌で包みこむようにして、ネズミが親指の腹で涙の痕を拭うように眦にふれる。
「…えっ」
「あんた、そういや、明け方夢に魘されて泣いてたな」
言われて、紫苑がはっとなる。
そういえば、夢を見ていた。
寒々しい冬のベランダで息が苦しくて、星が遠くて。
きみが遠くて。
かなしくて。さびしくて。
それでも、涙はなかった。
泣くなんて、ずっとこわくて出来なかった。
だのに、夢を見て泣いただなんて。
知らなかった。そんなの、いったい何年ぶりだろう。
「何だ。ママの夢でも見たか」
にも関わらず、相変わらずのネズミに、紫苑がつい憮然となる。
「どうして、ぼくが母さんの夢を見て泣かなきゃいけないんだ。ちがう、きみの夢だ」
「おれの? へえ、そいつは幸運だな。今日のあんたはツイてる。ただし出演料は高くつくぜ?」
舞台俳優らしくポーズをつけながらそう言うネズミを、紫苑がめずらしいものを見るように、まじまじと見つめた。
「何だ?」
「いや。なんか、そういうところは少し変わったかなと思って」
「は?」
「世慣れたっていうのかな。以前はもっと言葉が不器用でぞんざいだった」
言われ、ネズミがはっとなる。
「…あんたは変わってないな、そういうとこ」
「え、どういうこと?」
「直球で人の心を抉ってくる」
「…?ぼくが?」
身に覚えがないといった顔の紫苑に、ネズミがまったくあんたはと嘆息した。
「まあいい。つまり、こういうことだ。この4年で言葉は必要だと学んだ。女を口説く時は特に」
ちらりと紫苑を見て言うネズミに、煽られていると知りながらも、紫苑がついむっとなる。
「なるほど。きっとその二枚舌で、この4年、たくさんの女の人を口説いてきたんだろうな」
「それは誤解だ。4年じゃない。あんたと出逢う前から、女を口説く時はそんな風だ」
「それ、自慢?」
「女は言葉に弱い生き物だからな」
「ぼくには、簡単に使うなと言ったくせに」
「心を告げる言葉を、簡単に口にするなと言っただけだ。あんたみたいなお人好しは、逆手に取られて付け込まれる」
「ぼくは、そんなお人好しじゃない。ぼくだって」
勢いで言おうとして、紫苑がきゅっと口を結んだ。皿を両手で抱えたまま、視線を下げる。
「ぼくだって、この4年で変わった」
「へえ、どんな風に?」
「ずるくなった」
「あんたが?」
「うん。打算的になった…かな」
自分を責めるように言う紫苑に、ネズミが、紫苑の手から皿を奪いテーブルに置くと、手の甲でそっと紫苑の頬にふれた。
そんな瞳をして打算や狡さを語られては、世の中の人間すべてが懺悔をしなくちゃならない。
思い、ネズミがフッ…と眼差しをやわらげる。少し伸びた、光沢のある白い髪をくしゃりと撫でた。
「あんたの打算とやらは、また後でゆっくり聞くとして」
昨夜も思ったが、顔色が良くない。明け方も一度目を覚ました後も、苦しそうに顔を歪めて魘されていた。
「食べたんなら、少し眠るといい」
「結構、たっぷり眠ったけど」
「それでも顔色が青白い。声も、掠れてるしな」
耳にかかる髪を上げさせながら、そこに囁くようにネズミが言う。紫苑がくすぐったそうに肩を縮めた。
「あぁ、それはゆうべ…」
きみのせいで叫び過ぎたから、とさらっと言ってしまいそうになり、紫苑が慌ててはっと口を噤んだ。一瞬で耳まで真っ赤になる。ネズミがにやりと返した。
「そういや、さっき。下で隣の部屋に泊まってる画家に会ったぜ。おれの顔を見るなり、寝不足だとにやにやして文句を言われた」
「………え?」
「このホテルは古い造りだからな、何といっても壁が薄い。隣の部屋の電話の声も筒抜け…」
「そっ、そんなこと! きみ、ちっとも教えてくれなかったじゃないか…!」
かああっと全身で赤くなり、紫苑がネズミに噛みつくように抗議する。が、当然の如く、あっさり聞き流された。
「良いじゃないか。あんたの叫びは、今も昔もなかなか魅力的だ。聞き惚れる」






[以下、R-18シーンがあります。ご注意ください]















(サンプル2)


紫苑の部屋のベッド脇の床には、ネズミの部屋と同じく、本が積み重なっていた。
だが、どれも読みかけのまま放置されているようだ。しおりが途中に挟まっている。本を読む間もないほど多忙な日々なんだろう。
一番上にあったヘッセの『車輪の下』を手に取り、ベッドに腰かけ、ネズミが本を開く。
明かりの落とされた部屋の中では、風呂から出たばかりの紫苑が、窓の外を見ながら髪の水滴を拭っていた。その後ろ姿をベッドから見、無防備に向けられた背中に、ネズミが不意に目を凝らした。
僅かだがアルコールが入ったせいで火照っている上体を冷ますように、上半身はまだ何も身につけず、バスタオルだけを引っ掛けている。
その薄い背の真中辺りに、明らかに暴力を受けた痕跡を見つけた。気付いたのは、再会した夜だった。
抱いたのはこの前の夜が初めてだが、以前から裸は知っている。背中に痣などなかった。しかも数個所。木の棒で殴られたような痕。
痣になっているとは、多分、本人も気付いていない。よほどのナルシストでもなければ、自分の背中や尻を鏡で映して点検などしない筈だからだ。
これまで、危険に巻き込まれたことも、きっと1度や2度ではないのだろう。
一生消えない痣は、寄生蜂によるものだけで充分だったのに。
その傷を紫苑にもたらした相手に強い憎悪を覚えるとともに、自分の傷に対して無頓着な紫苑にも腹が立つ。
他人のためにどこまでも自分を投げ出せるくせに、自分のことになると途端にこれだ。血が流れるまで傷に気付かず、血が渇いたら、もうそこに傷があったことも忘れている。
他人の傷には、ささくれ一つでも痛そうに顔を顰めるくせに。
ベッドから立ち上がり、ネズミが、窓の外を見ている紫苑の背後に立つ。その細い体を、背中からそっと抱き寄せた。
雨音が耳に入る。窓を流れる雨粒が、まるで涙のように見えた。
「ネズミ…?」
「おれを挑発するあんたが悪い」
「挑発って何、そんなつもりは……あっ」
言葉を遮るように首筋に唇を寄せる。ネズミの腕が紫苑を拘束するように、前で指を組み強く抱き締めた。 耳元で甘く囁く。
「身体はもう回復したか?」
「…したよ。でも、此処ではだめだ」
「どうして」
「階下に母さんがいる。もし、気付かれたら」
「あんたが声を出さなければいい」
「…そんな、無茶だ」
「あんたのママを、ホテルの客みたいに寝不足にしたくなければ我慢することだな」
上体を覆っていたバスタオルが、紫苑の華奢な肩からするりと床に落とされる。露になった白い胸をネズミの掌が覆った。指が這う。
「待って、だから、無理だってば……あっ…!」
既に固くなっている胸の尖りに、ネズミの指先がくすぐるようにふれるなり、ぴくっと身体が震え、紫苑の唇から甘い声が漏れた。
「感度が良すぎるのも考えものだな」
からかうように言われ、紫苑の頬が真っ赤に染まった。
「うる、さい…っ…ん、やだ…」
唇を項に寄せながら、滑らかな白い肌を確かめるようにネズミの指がふれていく。臍をなぞって下腹におりていく危うげな動きに、紫苑が思わず身を捩った。構わず、ネズミが布の上から焦らすように、やんわりと膨らみを手の中に包み込む。
「ぁん……や…っ」
「何、あんた、嫌がりながらも、もうこんなに興奮してるんだ」
早いなと鼓膜を震わせるような悩ましい声で囁かれ、ますます下肢に熱が集中する。頬が熱い。手の中で軽く揉むようにされると、無意識に強請るように紫苑の細い腰が揺れた。
「ん…っ、ネズミ……だめ、だったら…」
だが、一度快楽を知ってしまった身体は解けるのも早い。抗いきれずに、それでも、紫苑がいやだと首を横に振る。
胸と足の間を同時に責められて、眉がぎゅっと切なげに寄せられた。吐き出す息も熱を帯びる。
「この程度じゃ、満足できないだろ? どうだ、もっと強く擦られたい?」
喘ぎを漏らしながら次第に開いていく唇を、ネズミが親指の腹でつう…と辿った。応えを強要されていると知って、紫苑がきゅっと唇を結ぶ。
それでも、手の動きを淫らに早くされると耐えきれず、小さく、こくんと頷首した。
「素直だな。あんたのいいところだ」
こんな状況だというのに本気で褒められて、紫苑が困ったような顔で肩ごしにネズミを振り返った。稚けない反応に、ネズミの濃灰色が細められる。唇が塞がれた。突然貪るような口づけをされて、紫苑が驚いたように肩を震わせる。
「…あ!」
同時にパジャマのズボンに入り込んできたネズミの手に、直に熱に触れられ、びくん!と大きく身体がしなった。思わず、ぎゅっと瞳を瞑る。そのまま、背後のネズミの腕の中に体重を預けた。
ふと、目を閉じる瞬間。机の上に登ってきた黒い小ネズミの姿を見たような気がして、眉を寄せ、キスの合間に声を震わせながら紫苑が首を振る。
「ツキヨ……見ちゃ……だめ…」
息も絶え絶えに告げる紫苑の痴態に、二人を見上げる小さな葡萄色の瞳がきょとんとなった。
「ほんと、だめ……見るな…っ……ああッ…!」
快楽に頬を染めながら、紫苑が片目だけ開けると、見上げてくる小ネズミを控えめに睨んだ。
既にクローゼットの上に退避していたクラバットとハムレットが、チチッと鳴いてツキヨを呼ぶ。ネズミの目が、ツキヨに行けと促した。元の主の命令に、ツキヨは仕方なく、といった風に机を降りて、ベッドからクローゼットの上へと駆け上がる。
ほっとしたように、紫苑が潤んだ瞳でネズミを見上げた。くす、とネズミの唇から微かな笑みが漏らされる。再び唇が塞がれた。もっと、と強請るようにネズミの首に両の腕を差し伸べれば、今度はさっきよりも、もっとわかりやすく笑まれる。
「あんた、どうした」
「え…」
「えらく積極的になった」
「あ、こういうのおかしい?」
「まさか。もちろん歓迎する」
低く耳元で、余裕を含んだ笑いで返されると、なんだか悔しい。歳は変わらない筈なのに、随分と子供扱いされている。
紫苑は耳に吹き込まれる息に肩をびくりとさせながらも、キスを受けていた唇を子供のように尖らせた。
目を細めて笑んで、機嫌を取るように、しっとりした大人の口づけが降りてくる。紫苑の長い睫が震えた。
「あんただけだ、歓迎するのは」
耳朶を甘咬みして、囁かれる。耳腔に舌が差し入れられると、ぞくぞくと痺れが紫苑の背を走った。




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