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Adagio(新刊サンプル)


『原作9巻ラストから4年後。多忙な日々の中、次第に笑うことも泣くことも忘れていく紫苑に、ある日、イヴの主演する『ハムレット』の舞台チケットが届く。差出人は不明。公演は今夜限り。紫苑は迷いながらも決心し、ネズミに会いたい一心でバスに飛び乗る』
11月6日発行のネズ紫本(18禁)です。
とらのあな様で予約が始まりました。
http://www.toranoana.jp/bl/article/04/0030/00/42/040030004216.html
※11/16完売しました。ありがとうございました。








(サンプル1)



広間の中は、まさに王宮の舞踏会のようだった。別世界に、まだ舞台を見ているような錯覚に陥る。
が、すぐ正気に戻った。間違いなく場にそぐわない自身のいでたちに気付いたからだ。
紫苑が場違いにかっと赤面し、扉を出ようとした時。別の扉から入ってきた集団に、俄に歓声が上がった。
どうやら王子様のご登場らしい。貴婦人らの波がそこに向かって移動していく。
「イヴ…!!」
「イヴさまよ…!!」
その名に、思わずつられて駆け出そうとして、はっと紫苑が留まる。
遠目に、イブの姿が見えた。どきりと胸が高鳴る。
まだハムレットの衣装のままだ。役者陣は、どうやら舞台衣装のままでパーティに参加するらしい。
口々に舞台の絶賛をする人々に、イヴが悠然と笑顔で応じているのが見え、愕然とした。
(………ネズミ……)
その笑みの中に、紫苑のよく知る皮肉げな笑みは微塵も混じってはいなかった。
あんな風に笑うようになったのだ。
あんな風に社交的に、あんな風におおらかに。
婦人たちの言葉に丁寧に笑みと言葉を返し、白く美しい手にシャンパンを手渡す。
いつから彼はあんな風なのだろう。
何があれほど彼を変えたのだろう。
この4年に、彼にどんなことが起こり、どんな出逢いが訪れ、どんな人が彼を愛したのだろう。
いや、今現在。誰かを愛しているのかもしれない。
この4年。そんな可能性を紫苑は考えたこともなかった。
(…ネズミが、誰かを……)
考えただけで、くらりとめまいがした。目の奥が熱くなる。胸が痛い。はちきれそうなくらいだ。
だが、よく考えれば、当然のことだ。そういった年頃で、彼は誰もが恋焦がれるほど魅惑的で、恋人がいたとして何ら不思議はない。
(…馬鹿みたいだな。ぼくは)
華やかな世界の中心にいるネズミとは裏腹に、片隅で俯いている紫苑は、まるで壁の花だ。
着飾った姉たちを羨しげに見つめる、壁際のみずぼらしい姿のシンデレラ。王子に見染められることもなく、ただ、成す術もなく、立ち尽くす。
(…惨めだな)
俯いたまま、拳をぐっと握り締める。
「イヴ、私と踊って」
「あらだめよ。今日こそ私と」
流れ出した優雅な音楽に合わせ、小鳥がさえずるような声で女性たちがネズミを誘う。
彼が、きれいな女性とダンスを踊るところなんか見たくない。談笑するネズミから目を逸らし、紫苑がきゅっと唇を噛む。
やはり来るべきではなかった。
舞台を見た後、すぐに立ち去れば良かったのだ。
此処は、紫苑のような者が来る場所じゃない。こんな華やかな所に居場所なんてないのだ。
もう、昔のネズミとは違う。
西ブロックにいたネズミは、もう何処にもいないのだ。
この世界中。
どこを探しても。
喪失感に打ちのめされ、紫苑が広間を後にしようと踵を返した時。
俄に、背後がざわつき出した。
何事か起きたのかと、紫苑がふと振り返る。
途端に、紫苑の緋色の瞳が大きく見瞠られた。
目前に、濃灰色の瞳が接近していた。衝撃に、全身が電流に打たれたかのようにビクリとなる。
その瞳をほくそ笑んで見下ろし、ハムレットの衣装を纏ったネズミが右手を差し出し、恭しく頭を垂れた。片膝をつくと、紫苑の手を掬い、甲に口付ける。
「どうぞ、私とダンスを。陛下」
「……えっ」
昔と同じ、どこか皮肉めいた微笑を浮かべ、だが、ひどくやさしい瞳でネズミが誘なう。
答えを待つこともなく、手が引かれた。
腰に手が回され、広間の中央へと踊り出る。
「ちょ……っ、あ、あの、ネズミ」
「踊りながら喋るな。舌を噛む」
「や、でも、ま、待って…! ぼく、ダンスなんて」
言いながらも、ネズミにリードされるまま、足は勝手にステップを踏む。
「踊れているじゃないか。そう、巧いぞ」
「う、うまく、なんか、ない。きみに振り回されている」
身体だけじゃなく、心も。
突然の出来事に、頭が混乱している。何がなんだかわからない。それでも。
目の前にネズミがいる。紫苑にふれ、見つめている。
それだけは、紛れもなく現実だった。夢じゃない。
「おれが教えたステップ、あんた、忘れていなかったな」
「え…」
「あの時も、そこそこ上手く踊っていた」
そうだ、あの日もダンスを踊ったのだ。こんな風に。
強引に手を引かれ、腰に手を回され、本の山が崩れやしないかと気にしながら、ステップを踏んだ。あの部屋で。
息がきれるまで。
拍子を取る低い声が耳の近くで聞こえて、重なり合った掌があたたかくて。
切なかった。
それでも、あの時はまだ疑いもしなかった。
ずっとこうしていられるのだと思っていた。
二人の前に、永遠はあるのだと。
そう信じていた。
だのに、今。
きみは遠い。
そばにいるのに。
こんなにも遠い。
「……っ」
不意に、紫苑が唇を噛み締める。
思い出してしまったのだ。
ストーブの温もり。少しかびたインクの匂い。
静寂の中、ネズミの指が本のページを捲る音と、小ネズミの鳴く声だけがしていた。
あの部屋にだけあった、あたたかな静寂。
懐かしさに胸が熱くなる。目の奥が熱い、痛い。
波のように郷愁が、胸を突き上げてくる。押し寄せてくる。
戻りたい。戻りたい。あの部屋へ。あの時間へ。
きみと、もう一度。
涙が紫苑の瞳を溢れ、頬を伝った。
こんな人前で泣きたくなんかなかった。
けれど、どうしても堪えようがなかった。
しゃくり上げて、紫苑の細い両肩が震える。ネズミが目を細めて、それを見つめた。
「…あんた、変わってないな」
愛おしげに、呟く。
「相変らず、子供みたいに泣きじゃくるんだ」
眦を真っ赤に染める紫苑を見下ろし、揶揄するように言う。紫苑はかなしげに首を横に振った。
「相変わらずじゃない。泣いたことなんか…きみと別れてからのこの4年間。一度もなかった」
「嘘をつくな」
「嘘じゃない。涙の流し方なんか、忘れてた」
あれほど素直に流せた涙が、ネズミが傍らにいなくなってからは、枯れてしまったかのように瞳を溢れることはなかった。
「だのに、おかしいな…。どうしたんだろう、ぼくは」
「紫苑…」
自分自身に戸惑っているような呟きに、ネズミの手がそっと紫苑の濡れた頬にふれる。赤い痣を辿るように。
「きみが、悪いんだ」
震える声で、責めるように言う。
きみが、ぼくの知らないところで変わってしまったから。
だから。
――違う。
もしもネズミが昔と変わってしまっていたら、ぼくはこんな風にきみの前で泣いたりできない。
ネズミは変わってないんだ。本質的なところはちっとも。
ぼくが、ネズミの前でだけ、やはりぼくであるように。
(ぼくは、きみに甘えていたんだ。ずっと…。今、それがわかった)
きみの隣では、ずっと自然でいられた。だから、涙なんか、意識しなくても溢れた。かなしくても嬉しくても、とどまることを知らなかった。ありのままの感情を露出し、ありのままの自分でいられた。
泣きじゃくる紫苑の背を、ネズミが抱き寄せる。
ギャラリーが沸くが、気にしない。
「あんた。走れるか?」
「えっ」
紫苑の耳元で、ネズミが囁く。4年前と寸分変わらない声と口調で。
「ズラかるぜ」
ハムレットとは到底思えない台詞を吐いて、ネズミが口の端でにやりと嗤う。







(サンプル2)は性描写が含まれます。大丈夫な方のみどうぞ。















(サンプル2)


「…あんた、やばいな」
「な、なに、が」
「エロ過ぎる。自制がきかなくなりそうで、やばい」
「そんな、自制、とか……ぁ…あ…っ」
自制なんてしなくていい。全部欲しい。きみが。
腕を広げて押さえつけられ、白いシーツの上に細い肢体を組み敷かれながら、乱れる息の下で、途切れ途切れに紫苑が告げる。
以前と変わらない、真っ直ぐな告白。
その扇情的な姿態に、ネズミはますます熱くなる息を苦しげに吐き出した。
「あんた、本当に」
おれを挑発とか、10年早い。
後で泣いても知らないからな。
耳元で低く熱く囁いて、貪るように口づける。
紫苑が、膝や腿を撫で回すネズミの掌の感触に、ぞくぞくと背中を震わせながら切なそうに眉を寄せた。
息が乱れる。
そして、僅かに開いた腿の内側に手を入れられ、布越しに熱の中心に触れられるなり、紫苑の全身はビク!と大きく波打った。
「ネズミ、待っ…」
緋色の瞳が見開かれ、小さく悲鳴が上がる。
そこを、誰かの手にふれられるのは、初めてだった。
「やめ………あぁ…っ!」
恐怖と羞恥に逃れようと藻掻く紫苑を、身体の下に押さえ付け、ネズミが、今にも弾けそうに膨らんでいるそこを手の中に包み込む。いきなり揉むようにされて、紫苑は快楽に堪えるようにきゅっときつく眉を寄せた。その悩ましげな表情に、ネズミの吐き出す息もさらに熱を帯びる。
「う……だめ……だって、ば…! ネズミ…っ」
直接的な刺激でもないのに、もうどうにかなりそうな顔をして、息も絶え絶えに紫苑が涙ぐむ。この程度で何をと、ネズミが耳腔に舌先を差し入れながら笑った。
「まだ序の口だぜ。ほら」
「ぁああっ!」
さらに強く擦り上げられ、ネズミの腕を挟んで、紫苑の膝ががくがくと揺れる。やめてと頬を染めて懇願して、何とかネズミの手を退けようと、紫苑が懸命に手を伸ばしてくる。
だが、そんな紫苑の抵抗も虚しく、両手首をネズミの片手の中に一纏めに拘束されて、そのままぐいと頭上へと上げさせられる。
防御の無くなった紫苑の下肢は、あっさりとネズミの空いた手で裸に剥かれた。
「――っ!」
下着ごと降ろされたズボンが、ベッドから床に投げ落とされる。一糸纏わない裸にされて、紫苑が羞恥に唇を噛んで身を震わせた。
藻掻く膝を無理矢理左右に割られ、紫苑の昂まりがネズミの眼下に露にされる。
「み、見るな…! ネズミ…っ」
「別に恥ずかしいことじゃない。正常な男なら誰でもこうなる。良かったじゃないか」
女とだってちゃんと出来るぜ?と下世話なことを言いかけて、ネズミが紫苑の両手を押さえつけたまま、自嘲のような笑みを漏らす。
そんなところを想像しただけで、胸を悪くして、相手の女に殺意さえ抱く自分がいるくせに。
西ブロックのバザールで紫苑の唇を奪った娼婦も、紫苑の前でなければ、もっとわかりやすい報復をしただろう。
紫苑と出逢って、自分がいかに嫉妬深いかを、ネズミはいやというほど思い知った。
「手を離して、くれ、いやだってば…!」
「欲しいと言ったのは、あんただろ」
「だけど、こんなのは嫌だ!」
「何が嫌なんだ。文句を言うな」
「いやだ、恥ずかしい」
涙目で真剣に言われて、ネズミが思わず微苦笑を浮かべる。どう考えても、さらに挑発されているとしか思えない。
とんだ天然だ。
「そういうあんたの台詞の方が、よっぽど恥ずかしいぜ?」
耳元で意地悪く囁くと、藻掻く紫苑の脚をさらに開かせ、ネズミが身体を割り込ませる。緋色の双眸が脅えたように震えた。
紫苑の膝を自由に閉じられないようにしてから、ネズミの手が、固く勃ち上がり、既に泣き出している紫苑のそこを手の中に握り込む。紫苑が眦に涙を溜めて、瞳を大きく見開いた。
「や……! い……やあああっ!」
紫苑の唇から悲鳴が上がり、両腿がネズミの腰を挟んでぎゅっと窄み、背がきつくしなった。
頭上に両手があるため、自然とネズミの目前に胸を突き出す形になって、紫苑の瞳がさらに怯える。
予想に違えず、過敏になった胸の先を唇に含まれ、舌でなぶるように転がされる。胸と下肢を同時に責め立てられ、紫苑は悲鳴に近い喘ぎを上げて激しく身悶えた。
「あ……ぁ…ぁ……あぁっ! や…! いやだ、こん、な…!」
「全然嫌がってないけどな、あんたの此処は。ほら、もうこんなになってる」
「ぁ…あ……っ! ネ、ズミ…っ、そんなに、したら……出…ちゃ…!」
「ああ、いいぜ。あんたのイク顔が見たい」
「いやだ、ば、か…っ」
涙ぐみながらも睨むように言えば、さらに手の動きを早められ、腰がわななく。
ネズミの意地悪な指先が、先端の滑りをそこに塗り込めるようにしながら、引っ掻くように強い刺激と緩い刺激を繰り返した。



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