最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
08 | 2011/09 | 10
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢のように僕たちは(最終話ネタバレ注意)


眼下には、信じ難い光景が広がっていた。
崩れ去った壁。変わり果てた世界。
泣きたくなるような、荒廃した夕焼けの空。

壁の残骸の向こう側でもこちら側でも、未だ小規模の爆発が続いている。
それでも、ひとまず聖都市はこれで完全に沈黙した。
一部のものたちが唱えた理想都市は、ついに崩壊したのだ。

やがてこの地に夕闇が訪れ、夜を迎え、そして、明日。
世界は、生まれ変わった新しい朝を迎えるだろう。


矯正施設の焼け落ちた跡に立ち、ネズミと紫苑は、その光景を見つめていた。
壁のあった場所へと、内側と外側から赴く人々の影が、遠く大地に連なっていくのが見える。
そこで、人々はどんな真実を見、知るだろう。
真実は。
正しくも美しくもない。
ただ、苦いだけだ。苦く、つらいだけだ。
それでも、知らないよりはいい。ずっといい。
紫苑もまた、それを望み、求めてきた。

『ぼくは真実を知りたいんだ。ネズミ…!それがどんなものだろうと』

だけど。真実はあまりにも残酷だった。
予想はしていた。
だが、それを遥かに凌駕した。
自分の甘さ、愚かさを思い知る。
「あんたにこの光景を見せたかったんだろうな。エリウリアスは、沙布は…」
紫苑の心を知るかのように、静かにネズミが言った。
いたわるような、あたたかな声音で。
紫苑が掲げた『壁を無くす』という”第三の道”は、ネズミが理解し導き、沙布が伝え、エリウリアスが実現させた。
果たして、それが今後人々にどういった未来をもたらすのか。
今はまだ、何もわからないけれど。

わかっていることは、たった一つだ。
人は愚かだ。そして弱い。
それを思い知った。
「ネズミ…」
苦しげな声が、傍らのネズミを呼ぶ。声が震えた。
「ぼくを、赦さないでくれ」
「…紫苑?」
「ぼくは、きみに、ひどいことを言った…。すまない。いくらあやまっても、あやまりきれない」


『きみは、利用したのか。そうだ、利用したんだ…! きみの目的は最初から矯正施設の破壊だった! 沙布の救出は口実に過ぎなかった!! きみは沙布を利用したんだ…!!』
現実を受け入れられない苦しさから一時逃れたくて、激情のまま、思いついたままを口にした。
ネズミは一度目を伏せ、そして皮肉げな笑みをはりつかせてこう言った。
『そうだ。その通りだよ紫苑』


耳の奥で、頭の底で、自分がネズミに放った言葉が、まだ木霊のように響いている。戒めのように。
「ぼくは…最低だ」
絞り出すように告げて、項垂れる。
ネズミを傷つけるものは許さない。そう思っていたはずなのに。
誰より紫苑自身が、深く傷つけた。
自分が許せない。血が滲むほど、きつく唇を噛み締める。
「何の話だ? あんたは4年前と同じように、またおれの命を救ってくれた。あやまるようなことがあるか?」
「それだって、ぼくを庇って撃たれたんだ! あんなひどいことを言ったぼくを、きみは庇って…!」
自分の身を盾にして護ってくれた。
紫苑の眦が赤く染まる。こぼれ落ちそうになる涙を、かろうじて堪えた。
「あんたは、事実を言っただけだ。何も違えていない」
「嘘だ…!」
「嘘なもんか」
「嘘だ。ぼくは君をなじった! 自分の手は汚さず、きみにマザーを破壊させたくせに、全部君のせいにした!」
「事実だ。おれのせいだ」
「違う!!」
きつくかぶりを振る。涙が飛び散った。
「紫苑、聞け! おれは」
「ぼくは、自分の掲げた理想がどれだけ甘かったか、どれだけ無知で傲慢だったかを思い知らさせて、打ちのめされていた、だから、だから…!」

『大したジョークだな。最高の夢物語だよ』

自らを嘲笑うような紫苑の言葉を聞いて、ネズミは涙さえ浮かべ目を見瞠った。
それをあんたが言うのか。その顔で、その声で。
あんたがそんなことを言うなんて、おれは信じたくない。
そんな心の声が聞こえた。
自らの甘さに罰を与えるように理想を否定した紫苑に、ネズミは悔しさを滲ませたのだ。
まるで、自分が紫苑にそう言わせてしまったかのように苦しそうな顔をして。

矯正施設への潜入は、互いの利害が一致した結果だったのかもしれない。確かに、それだけだったのかもしれない。真実は、最初はそうだったのかもしれない。
だけどもネズミは、きれいごとだ夢物語だと皮肉って笑いながらも、紫苑の『理想』が現実になる可能性を常に考えてくれていた。
そのためなら、たとえどんな汚れ役だろうと悪役だろうと、茶番を演じようといとわない。たとえ紫苑に恨まれえることになっても。
ネズミには、最初からそれだけの覚悟があった。
紫苑には覚悟が足りなかった。
それが結果的に、大切な人たちを傷つけた。
あの時。紫苑の中にあったのは、きれいな理想には程遠い、醜く渦巻く破壊衝動だけだった。

「壊したかったのは、ぼくだ! なのに、全部! 全部全部なにもかも! きみが悪いみたいに責めて、きみを罵った! きみをなじった、ぼくは最低だ、ぼくは、僕は!」
「紫苑!」
「きみが言ったみたいに、ぼく自身がまさにNO.6そのものだった! 愚かで無知で傲慢で…!!」
「違う! 聞け、紫苑!!」
「違わない!! 沙布じゃなく、いっそ、ぼくがいなくなれば」
「紫苑!!!」
それ以上言わせないというように、ネズミの手が紫苑の頭を強く胸へと抱き寄せる。力強い腕に抱き竦められて、紫苑は途端に、”うわああっ”と大声を上げて泣き崩れた。
背が大きく波打つ。涙が止まらない。
感情が抑えられない。苦しい。
胸が痛い。灼き切れるように胸の奥が熱い。
この苦しさに打ち勝つ覚悟も、受け入れる覚悟も、事実から目を逸らさない覚悟も、できてはいなかった。
だから、だから、こんなことに。
「あぁああ……っ、うわああぁああ……!」
あの嵐の夜と同じだ。自分の中の衝動を抑えきれない。吐き出さなければ飲み込まれる。引き込まれる。
何か、暗い闇の中に。
怖い…!
「紫苑…」
あたたかな声が、耳元でそっと、紫苑の名を呼んだ。紫苑がはっとなる。
「…っ」
墜ちていこうとする闇の中に手を伸ばして、紫苑を抱き寄せ、引き上げてくれる。
暗闇から護ってくれる、やさしい腕。
ネズミの手が泣きじゃくる背を撫で、髪を撫でる。
涙にぐっしょり濡れた白い頬を、赤い痣を、いとおしそうに掌で包んだ。
「泣くな、紫苑」
「ネズミ…っ」
「泣くな…泣かなくていい。あんたは何ひとつ悪いことなんてない。自分を責めなくていい」
「だめだ、ネズミ…」
腕の中で、ネズミを見上げる。懇願のように言った。
「ぼくを、甘やかさないでくれ、ネズミ。甘やかしちゃ駄目だ…」
「ったく、あんたは。言ってることとやってることが、まるで真逆だ」
言いながらも、ネズミの背にぎゅっと強くしがみついてくる紫苑に、ネズミが思わず苦笑を漏らした。
何がおかしいのかと、ぽろぽろと涙をこぼしながら、紫苑が不思議そうな顔をする。
無意識だとしたら、それはそれで願ってもないが。
これだから。あんたにはかなわないんだ。
胸でネズミがこそりと呟き、また笑みを漏らす。
「いろいろなことが一度にあって、あんたは少し疲れてるんだ。大丈夫、もう壁はなくなった。早くママのところに戻って、思いきり胸に抱きしめてもらうといい」
揶揄を含んだネズミの台詞に、紫苑が少し不服そうに上目使いになった。
「違う、ぼくは…」
ぼくが抱きしめてほしいのは、母さんの胸じゃない。甘えたいのも、母さんにじゃない。
誰の慰めもいらない。誰もいらない。
きみ以外の誰も欲しくない。
そう言いたいのに、まだ感情の波が落ち着かず、うまく言葉にならない。できない。
「ぼくは……ネズミ、きみじゃ、なきゃ、いやだ……っ」
駄々をこねる子供のような涙声に、泣き顔に、ネズミがいよいよ呆れたように笑い出す。
「よしよし、泣くな」
言いながら、ぽんぽんとあやすように背を叩き、前髪を上げさせて額にキスする。
「あんたはいい子だ。ほら、もう泣くな」
「ひどいな、そんななぐさめ方じゃ……よけい涙がとまらなくなる」
「ぜいたくだな」
「うん、ぜいたくだ」
言って、ネズミの胸に濡れた頬をきつく寄せた。心臓の音を確かめるかのように、目を閉じる。
このまま、ネズミの胸に顔を埋めたまま、泣いて眠ってしまいたかった。
涙はもう、この胸でしか落とせない。この腕の中にしか、本当の安息はない。
くるしくなるほどの、想いも。

だのに。
二人の道は、違えようとしている。
今、それを感じている。

「…ぼくは沙布を失って。今また、きみさえも失うのか」
ぼんやりと紫苑が、ネズミの胸で呟いた。
「いや。あんたはおれを失ったりしない。たとえこの先、何があっても」
「ネズミ…?」
紫苑が顔を上げて、ネズミを見る。
「この世界のどこにいても、魂は、いつもあんたの傍らに在る。おれはいつだって、あんたのものだ。出会ってから再会するまでの4年。あんたのことを考えなかった日は一日もなかった。これからも、そうだ」
「ぼくも。この4年、いつも、片時も、きみのことを考えなかったことはなかった。きっと今も、別れた瞬間から、きみに会いたくて、焦がれ続ける」
「…紫苑」
「きみがそばにいない日々なんて、もう考えられない」
見つめてくる赤い星のような瞳に、濃灰色の瞳が静かに伏せられる。
愛の告白のように、紫苑は言った。
「ずっと一緒にいたい」
「それはだめだ」
「どうして…!」
懸命に言い募る紫苑に、ネズミは瞳を開けると、肩を竦めて笑ってみせた。
「あんたが、おれに骨抜きにされてしまう」
「……えっ?」
唐突な語句に、紫苑の瞳が丸くなる。思わず声が裏返った。
「そ、それどういう意味…」
「困るだろう、あんたも」
ずいっと接近されて、紫苑がなぜか、ぎょっとなる。焦ってしまう。
「べ、べつに困らないけど、ぼくは、えっと…!」
「おれは困る。これ以上あんたに惚れられては、イヴのファンの女と気軽に寝られなくなる。あんた、妬くとおっかなそうだからな」
「ば…」
紫苑の顔が、ぱあっと耳まで真っ赤になった。
反論しようにも何と言ったらいいのかわからない。口をぱくぱくさせる紫苑に、ネズミがおかしそうに声を上げて笑い出した。
「ネズミ…! 笑い過ぎだ。こんな時にからかうなんてひどいじゃないか…!」
「あぁ、悪い」
むくれる紫苑の顔が可愛いくて、ますます笑いが止まらなくなる。
そんな二人の横顔を、沈んでいく夕日が赤く照らし出した。
今日、最後のかがやき。
長かった一日が、ついに終わる。
明日からは、太陽の光も、きっと違って見えるのだろう。
NO.6にも西ブロックにも、同じ朝が訪れるのだ。
「あんたには、NO.6だった場所に戻ってやるべきことがある。おれはおれで、やるべきことがある。おれたちは所詮、同じようには生きられない」
山々の向こうに沈んでいく夕日を見つめ、静かにネズミが言った。
「壁は無くなったのに?」
「壁の内と外では、人も生き方もモラルも違う。そんなにすぐにうまく行く筈はない。しばらくは混乱と混沌が続くだろう。その調整役には、あんたのように両方の世界を知ったものが適任だ。あんたもそれを望んでるんだろう?」
確かにそうだ。そう願っていた。
ネズミの言葉に、紫苑が頷く。
「きみは、西ブロックに戻るのか?」
「おれは森の民だ。風に誘われるまま、自由に生きるさ」
紫苑の問いに、さらりとネズミが答えた。
これもまた、偽りのない答え。
「あんたは、誇りを持って、自分の仕事に専念すればいい」
「ネズミ…」
「その頬に、風がそよぐ日も凪ぐ日もあるだろう」
「もしも嵐がきたら?」
「そうだな。そんな夜は、窓を開けておくといい」
「風が、ぼくのもとに吹き込んでくるように?」
ああと肯き、ネズミが微笑む。

そうして、別離の時は訪れた。

ネズミが紫苑の傍らから、ゆっくりと立ち去る。
幕が下りた後の舞台から去るように、風のように優雅な足取りで。
ネズミのぬくもりが離れた途端、夕闇の寒さが紫苑の痩せた体を冷やした。
「ネズミ…!」
堪らず振り返り、耐え切れずに呼んだ。ネズミが振り返る。
だけど、もう何も言えない。
これ以上。引きとめる言葉もない。
どうしていいか、わからない。
別れのつらさに、ただただこぼれおちる涙をこらえようと、紫苑がきつく目を閉じ、唇を噛みしめる。
泣き顔は見せたくないと思った。
だけども、笑えるほど強くもない。
かなしみにじっと耐えて震える細い顎に、ふいに力強い指が掛けられた。
はっと瞳を見開くなり、赤い双眸に、濃灰色のやさしい瞳が映り込む。

「……っ」

口づけは、一瞬だった。
誓いのように、たった一度。
だけども、紫苑にぬくもりを与え、勇気づけるには充分だった。

言葉ではどうにも足りないと、ネズミの瞳が見つめてくる。
初めて見る、ネズミの包み込むようなやさしい瞳。
寒さに凍える紫苑の胸に、あたたかな火が灯るようだった。



「あんたなら、大丈夫だ。必ず、成し遂げられる」
「もし成し遂げたら。そのときは、きみと行くことを赦してくれるか」
「わかった。必ず迎えに来よう」
「約束だ。絶対に」
「ああ。おれは、一度交わした約束を違えたりしない」



―――再会を、必ず―――


それは、二人の、未来に繋がる、まさしく誓いの言葉だった。

















「夢のように僕たちは」


夢のように僕たちは
生きてきて ここへ来た
時間も涙も苦しみも みんな
遠く霞がかかった辺りに
おいてきた



歩いてきたのに
まだ歩くみたいだ
きっとずっと同じかもしれない

同じかもしれないね



時間なんかおいてこれるはずないじゃないか
涙だって
苦しみなんかもっとさ



夢のように僕たちは悲しくて
夢のように僕たちはうちふるえて
夢のように僕たちはひとりぼっちです



(詩:銀色夏生)


スポンサーサイト

アニメ最終回感想

何でこんなに原作と違うの??いったいどうなっちゃうの??と、初めて見た時はハラハラしすぎて、ものすごく力んで見入ってしまい、見終わった後で茫然自失。
(あとから筋肉痛になりました…涙)
と、とにかく後でもう一回見よう…落ち着こう…と一度寝て、たっぷり時間をとって延々リピート。

紫苑が、ネズミに第三の道はどうなったと聞かれた時に、自分をなじるみたいに『大したジョークだな、最高の夢物語だよ』と言ったのがとてもつらかったです。
それを聞いたネズミの涙も。紫苑にそれを言わせてしまったことを悔やんでるみたいな涙だった…。
汚れ役も悪役も全部引き受けるネズミの覚悟が痛々しかったです。
そこまでして紫苑の心を護りたかったんですね。(このあたりから涙涙)
 
しかし、しんみりしている間もなく、この後予測のつかない展開が次々と…!
「紫苑、撃たれ…え、え、え、???」
「うそ…! そんな まさか、死……(呆然)」とか
「イヌカシと力河さん、二人を置いて逃げた!?!?」とか
「ネズミが紫苑に葬送の歌…!?」(号泣)
「紫苑、生き返ったああああ!?」
「うわぁ、楊眠も寄生バチに…」
「再会をかならず(ばい、ネズミ)はどうなったー!」
というか、ネズミ旅立ってないですね…?
「シオンは紫苑が育てるの!?だったら名前はネズミになるのか!?」
「えええ、チップふんづけて壊した!いいの!?」
などなど。

ともかく、やっぱり11話じゃ全然足りなくていろいろ説明不足で勿体ないところは多々あるけれど。
でも見れば見るほど、これはこれですごく良い最終回だったんじゃないかなあと思えてきました。何回見ても飽きないです。(そして毎回同じところで涙、涙)
アニメならではの見せ方とかBGMや演出、原作から離れたオリジナルな展開。それでも、各々のキャラクターのそれぞれの想いがいっぱいつまってて、切なくて本当に泣けました。
でも一番号泣したのは、ずっと生に執着して生きてきたネズミが、紫苑を失ったことで、自らも生きることを手放したシーン…。
イヌカシの叫びとか、紫苑の亡骸の隣に寄り添うように横たわるネズミとか、虚ろな目で唄う風のレクイエムとか、もう、もう…!
最初見た時は、ネズミたちを置いていったみたいに見えたイヌカシも、力河も連れていったから、きっとネズミと紫苑を二人にしてあげようと思ったんですね…。
そして沙布は、愛する人の命を救って旅立てて、原作よりは彼女にとって救いがあったんじゃないかなと思います。あの微笑みが物語ってますよね…。

でもやっぱり、シオンはイヌカシに育てさせてあげてほしいなあ。それが一番の不満どころかな?
まあ後から取り返しにきてくれるかもしれませんけどね。
「それはおれが預かった赤ん坊なんだからな、返せ!もう名前もおれがつけたんだ!」とか言って紫苑から奪い取っていきそう(笑)
アニメの方では、ネズミは旅立つとは一言も言ってないので、元・西ブロックのあったところか、森の民が住んでいたあたりに戻ったのかもしれないですね。
案外、会おうと思えばすぐに会える距離にいるのかも…! 
アニメはその妄想の余地も置いておいてくれたのかしら、だったら嬉しいなあ。
賑わいを取り戻したバザールで、たまーにデートとかもいいよね…!(*´∀`*)
ま、そうはいいつつも、原作の旅立っていくネズミがいいんですけど。
で、ネズミの帰りを待ちきれず、四年後くらいに紫苑がネズミを追いかけて旅立つ話とか、そういうお話もまた書けたらいいなあ。


何はともあれ、素晴らしい作品にしてくださったアニメのスタッフの皆様、キャストの皆様、本当にありがとうございました…!!&おつかれさまでした!!




ああでもアニメ終わってしまって、本当にさびしいです…。
ラジオも、あと二回なんですってねー…。
でも毎月出るDVDはとっても楽しみですし…!!
(一巻のオーディオコメンタリーすごくよかった!)
まだまだNO.6の世界にどっぷり浸っていたいです!


いろいろ届いた!!

昨日サントラが届いて、今日やっとDVD一巻が届きました!!
そのあと通販をお願いしていたネズ紫の同人誌まで届いたりして、いったい何から聞いたり見たりしていいのか、しあわせすぎて紫苑みたいに「うわああああ」と叫びそうです!
とにかくサントラは、「めぐりあい」をヘビロテ。この懐かしいような切ないようなメロディが本当にたまりません…!(´;ω;`)
二人のダンスシーンが脳内でエンドレスリピートされる…。
ドラマCDも聴きました…!!すごいわ何かもう胸がいっぱいでどうしたら…!!
ジャケットも本当に素晴らしいです!! いつまでもながめていたいvv

今日は仕事休みだし、一日SS書くよと思っていましたが、それどころではありませんでした…!
次のお休みにまた頑張りますv
アニメ最終回の感想もまた書きたいです。

テーマ:雑記
ジャンル:その他

はじまりの朝と、さよならの月夜(2)

気付かれたかもしれない。手遅れかもしれない。だが、どちらにせよ躊躇している余裕はなかった。
ともかく治安局員に気付かれないうちに(気付かれていないとするのならば)、森の中に身を隠してしまわねばならない。
「急げ…!」
「ちょ、ちょっと待ってネズミ」
力まかせに腕を引っ張られ、足元の濡れた落ち葉に足をとられ、紫苑の上体がつんのめる。
「うわっ」
手を差し出す暇もなく、ネズミの背後で紫苑がべしゃりと顔面から落下した。
「何やってんだ、あんた」
「きみが引っ張るからじゃないか!」
「あんたがもたもたしてるからだろ!」
怒鳴り返され、紫苑が憮然としながらも顔の泥を拭い、立ち上がる。膝が伸びるなり、途端に顔を顰めた。
「…っ」
「どうした、怪我したのか」
「いや。膝を擦り剥いただけだ、大丈夫」
「血が出てるぞ」
白い両の膝小僧から流れる血を見て、ネズミがやや心配げに言う。紫苑はむすっと頭を振った。
ゆうべのネズミの怪我に比べれば、まったく心配されるような傷じゃない。それなのに、痛みについ顔を顰めてしまった自分が何だか情けなく思えたのだ。
「平気だってば。それより行こう、ネズミ」
軽くびっこを引きながら、先に立って歩き出す紫苑の背に、ネズミが溜息を一つつき、肩を竦める。ゆうべも思ったが、顔に似合わず案外気が強い。
そして、一度振り返り、治安局の車が向かった先が紫苑の邸だったことを確認する。
まずい。このままでは、すぐにこの森にも捜索の手が伸びるだろう。
ネズミは、足早に紫苑を追い越すと、その前へと回り、背を向けて腰を屈めた。紫苑が驚いたように立ち止まる。
「掴まれ」
「え?」
「ほら。おれの肩に掴まれって言ってるんだ」
「きみにおぶされって言うのか」
「ああ、そうだ」
「ぼくは大丈夫だって言ったじゃないか」
「あんたがそんな風にのたのたしてたら、あっというまに捕まるだろうが」
「で、でも」
ネズミの背を見下ろし、たじたじと後退しそうになる紫苑に、やや苛立ちながらネズミが声を荒げる。
「のろま! さっさとしろよ!」
「だって、きみの方が背が小さ…、うわあっ!」
紫苑の言葉の終わりを待たず、ネズミが紫苑の両腕を強引に引き、自分の肩へと担ぎ上げる。投げ飛ばされそうな勢いに、紫苑の腕が反射的にネズミの首へと回された。無意識に思いっきりしがみついてしまい、紫苑の頬が自然と赤らむ。
「それでいい」
「ネズミ…っ」
「走るぞ! ともかくあんたはそこでじっとしてろ!」
言うが早いか紫苑の両腿を身体の横で抱え直して、ネズミが猛スピードでなだらかな丘を駆け出した。
リュックを背負っている上、手に靴まで持った紫苑を小さな背に担ぐのは、どう考えても困難のように思えたが、ネズミは軽々と紫苑を抱え、一気に斜面を駆け上っていく。ふらつきもしない。
「ネズミ! きみ、怪我してるのに、こんなこと、して、また傷が開いた、ら、どうす……っ」
「うるさい、だまってろ! 舌かむぞ」
「……もう噛んだよ」
「は!?」
「…今、噛んだ」
答えてきた情けない声に、ネズミが一瞬ぽかんとし、それから走りながら肩を震わせてくくっと笑う。
まったくもって、笑っている場合ではないのだが。
こんな時にでも発揮される、紫苑の天然っぷりがおかしかったのだ。
そうして走っているうち、もともと自身が計画した逃走ルートから大きく外れていることに気付いたが、それでも、どうしてだか逃げのびられる、そんな気がしていた。
紫苑となら、このままどこまでも行ける気がしたのだ。二人なら。
それこそ、この青い空の果てまで駆け上がって行けそうな――。
が、無論それは妄想で、現実的にはかなり危機的状況であることは確かだった。
このまま丘を上りつめても勝算はない。
それどころか、目指す地下水路の入り口まで、気の遠くなるような遠回りをしなければならなかった。
「ネズミ、ネズミ」
ネズミの耳元で、紫苑が呼ぶ。
「何だ」
「丘のてっぺんの方に、丸い形のこんもりした茂みが見えるか。ほら、あれ。アオウミガメの甲羅みたいなカタチ」
「アオウミガメの甲羅がどんなかおれは知らないが、あれがどうした?」
「あそこに向かって走ってくれ」
「は?」
「いいから!早く!」
耳元で声高に命じられ、ネズミがむっとなる。
「ヒトにおぶさられてる割には態度でかいな。あんた」
「いいから急いで。あっちだ!」
言われるままに大きな丸い茂みに辿りつき、こっちだと指差す方向へと向きを返る。確かに大ウミガメの甲羅のような形をしている。
「山側の方に、子供がやっと通れるくらいの抜け道があるんだ」
「妖精が通る道か?」
「さあ、それはどうか知らないけど」
「で?」
「この奥だ。あ、ここで降ろして」
「おい、こら」
しゃがんだネズミの頭の上をぴょんと飛び越え、紫苑が素早く身を小さく屈めて茂みの奥へと分け入っていく。何が何だかさっぱりわからないが、ネズミも仕方なく後に続いた。
「あった…!」
かなり奥に入った辺りで、紫苑が嬉しそうな声を上げた。手招きされて近づけば、足元に丸いマンホールのような蓋が見える。
「なんだ、これ」
「ちきゅうのふた!」
「は、蓋?」
「って、ぼくは呼んでるんだけど」
「開くのか?」
「前やってみた時は開かなかった。…う、やっぱり固いな」
「どけ、おれがやる」
紫苑に代わって、ネズミが蓋にある二箇所の錆びた取っ手に指をかける。息を吐き、思いきり引き上げた。
「うわー開いた!!」
持ち上がった蓋を見て、紫苑がすごいすごいと手を叩き、歓声を上げる。ネズミは蓋を横にやり、注意深く中を覗き込んだ。
まるで地中深く埋め込まれた煙突のようだ。だが、遥か下方に微かに光が見える。
いぶかしむネズミを置いて、意気揚揚と紫苑が穴へと滑り込んだ。内側にある梯子にそろっと足を下ろす。どうやら崩れ落ちはしなさそうだ。
「中に入るぞ。ぼくが先に行く」
「ちょっと待て、大丈夫なのか。此処はいったい」
「うん、たぶん大丈夫。入るのは初めてだけど」
「中に何が…おい紫苑。リュックが引っかかる。おれに寄越せ」
「ありがとう」
紫苑の手からリュックを受け取り、上から注意深く下を見ながら、ゆっくりと、人一人がやっと通れるくらいの直径の、特殊コンクリートの筒状の穴の中を、今にも折れそうな鉄梯子を伝い降りていく。人の気配はない。
「ここさ、沙布のおばあさまから、ずっと前に聞いて」
「さふ?」
「あ、友達なんだ。幼馴染みの女の子。その子のおばあさまが、このあたりの地下には旧式のシェルターが埋まっていて子供の頃よく遊び場にしてた、って言ってたんだ」
「シェルターだって?」
「うん。ぼくも聞いた時はもっと小さかったから、よくわからなかったけど。おばあさま、今はおっとりした雰囲気の人なんだけど、大昔はおてんばだったんだって」
「へえ」
そんなばあさんのことなど知るかと思いながら、やっと深い地下に降り立てば、穴は今度は真横へと続いていた。
二人で顔を見合わせ、今度は四つん這いで横穴に入る。ほどなくして、大人が立てるくらいのドーム型の部屋に出た。案外広い。
部屋の奥には古い扉があった。錆びたそれを開けば、コンクリートで作られた棚があるだけだ。どうやら貯蔵庫に使っていたらしい。
壁に埋め込まれた操作パネルは、旧式過ぎて紫苑たちにはさっぱり理解できそうにない。
もっとも、仮にどんな高性能な設備が整っていようが守りが頑丈だろうが、一切無駄ごとのように思われた。
見上げれば、その天井には、ぽっかりと丸い穴が空いていたのだ。
長く時間が経つ間に、自然と崩れてきたのだろう。
だが、光が差し込む分、明かり取りにはちょうど良かった。
もっとも雨が降れば、中で傘をささなければならないけれど。(水はけは良好のようだ)
「すごい、おばあさまの言ったことは本当だったんだ」
「しかし、よく正確に場所まで覚えていたな」
「うん。おばあさまの記憶力はすごいんだ」
「じゃなくて、あんただよ。子供のころに聞いたきりだったんだろ。ましてや、今、どうなっているかわからない」
「うん。でも実は、前に一度この茂みまでは来たことがあったんだ。でも、どうしてもあの蓋が開けられなかったからあきらめて。そのまま、ついさっきまで忘れてた」
「それが、おれなら開けられたわけだ」
「うん?」
「あんたの力じゃ、さっきも開かなかった。けど、おれの方がチビだって言ったくせに、おれの方があんたより腕力があったってことだろ」
「…こだわるなぁ」
リュックを床に置いて、紫苑が壁にもたれて腰を下ろす。ともかく、ちょっと一息つきたい気分だった。
隣ではネズミが、紫苑が持ってきた靴に足を入れているところだった。にやりとする。
「あんたみたいななまっちろいガキに、チビとか言われたくないからな。言っとくが、今にあんたの背を抜くぜ。ほら、見ろよ。おれの方が足がでかい」
「うそ、本当に!?」
確かに紫苑の靴は、ネズミには窮屈なようだった。紫苑がぷいっとそっぽを向く。
「足が大きいからって背が伸びるとは限らないだろ」
「けど、統計的にはそうだ。ま、せっかくだから有難くもらっとくけどな。ちょっと窮屈だが我慢してやる」
「本当に、きみは感心するほど口が悪いな、ネズミ」
「それはどうも。けど、あんたもそんなに人のことは言えないぜ?」
「え、そうかな? はじめて言われたけど」
その言葉を肩を竦めてやりすごし、ネズミが膝を伸ばして坐っている紫苑の前に回る。リュックを指差した。
「救急ケースは持ってきたのか?」
「ん? あるよ。ほら」
引き寄せたリュックの中から、見覚えのある白いケースが登場する。ネズミが、そこから消毒液と綿とガーゼを取り出した。何も言わず、紫苑の膝の傷の手当てをはじめる。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。しかし、用意周到だな、これ」
「だって。またきみが怪我をしたら困るだろ」
「それはありがとう。っていうか…あんた、おれが怪我をするのを期待して追いかけてきたんじゃないのか」
「へ? まさか」
「そうかな。ゆうべ血管縫合してた時、あんた、相当顔がにやついてたぜ?」
「ま、まさか、そんなことないよ。必死だったんだからな。そりゃあ、ちょっとは興奮したけど…!」
弁解しながら、紫苑の顔がかあっと真っ赤になる。くすりとネズミが笑いを漏らした。
「ちょっとでも充分だ」
そら終わったぞと、ケースを紫苑の手に返す。驚くほど手際がよかった。
「ところで、これからどうする。VCチップが、まだきみの体内にあるんだろ?」
「取り出す手術をしてやるとか、恐ろしい発想はなしにしてくれよ」
「さすかにそこまでは」
「それは助かるな。もっともあんたに手術してもらわなくても問題ない。今は作動していない。本来、犯罪者を識別するためのものでしかないからな。探索システムを使ったところで、正確な追跡は不可能だ。もし確実に追跡できるなら、おれの潜伏場所を特定するのに一晩もかかったりしない。あんたの邸に忍びこんで一時間もしない上に、治安局がどかどか邸に押し行っている筈だ」
「なるほど」
「想定外のことには弱いのさ。この聖都市は」
そして、物事の表面。きれいなところだけしか見ようとしない。目に見えないところにある汚れは、最初から視界に入れず見ようともせず、なかったものとして処理される。それがNO.6の正体だ。
もっともそのおかげで、地下の下水道や廃棄ルートやこの旧式シェルターなどが充分に活用できるわけだけれど。
「だから問題は、おれのVCチップじゃなくて…」
ネズミが、そこでいったん言葉を切った。
濃灰色の瞳が一瞬だけ鋭くなり、紫苑の腕のブレスレットを見遣った。
NO.6の市民登録番号が刻まれたブレスレット。これだけは、市により徹底管理がされている。
つまり紫苑といる限り、ネズミの居場所も治安局に筒抜けというわけなのだ。ほどなくして、此処も発見されるだろう。
ネズミに要求されるニ者択一は、以下だ。
紫苑を此処に置き去り、一人で逃げる。
もしくは、そのブレスレットを捨てさせ、紫苑とともに逃げる。
選ぶべきは、当然前者の方だった。
迷わずそうするべきだと、ネズミ自身が一番よく知っている。
連れていったところで、紫苑の身を危険に晒すだけだ。今なら間に合う。
このまま放置していっても、治安局が安全に保護するだろう。今の状況では、紫苑は犯罪者に連れ回されたただの被害者だ。(紫苑が余計なことを喋らなければ、という注釈はつくが)
――だが。
身体の横で、ぎゅっと拳を握る。
相反する心の声も、ネズミには聞こえていた。

ずっとじゃないことは、わかっている。
西ブロックにつれていけないことも知っている。
だが、一度別れたら二度と会えないかもしれない。
だったら、せめて、あと少しだけ。

だが、その少しが命取りになる。それも良く熟知していた。
ましてや市民権を放棄させることは、それこそ紫苑の未来をこの手で潰してしまうことになる。一度捨てれば、紫苑は二度とNO.6の市民権を得られない。
唇をきつく噛み締める。考えている時間はない。
(―だめだ。やっぱりここで別れるしかない)
苦悩するネズミがやっと意を決し、顔を上げた瞬間、紫苑が立ち上がり、にっこりと微笑んだ。
ネズミの目前で、静かに腕からブレスレットが外される。
濃灰色の瞳が驚愕に見開かれた。
「待て、やめろ! 何、やってんだ、あんた…!!」
止めようとするネズミの手を制して、紫苑が首を横に振る。か細い悲鳴のようなエラー音とともに、ロックが解除された。
「ぼくたちが生き延びるためだろ、ネズミ。だったら、代えられるものなんかない」
微笑さえ浮かべてきっぱりと言う紫苑に、差し出されたブレスレットをネズミが震える手で受け取る。
「馬鹿だ、あんた…! 何もかも、今日までの何もかもを失うことになるんだぞ…!」
「覚悟してきたつもりだけど」
「二度とママのところに戻れないかもしれない」
「それは…母さんに申し訳ないと思うけど。でも」
「…でも?」
惑う眼差しの前で、紫苑がまっすぐにネズミの瞳を見つめ返して、凛として告げた。

「きみといたい」

「…紫苑」
「うまくいえないけど、今は、それだけだ」
告白に微笑む紫苑とは裏腹に、やや苦しげに、絞りだすようにネズミが言う。
「きっと後で後悔する」
「後から悔やむから後悔っていうんだろ。でも、今はずさなかったら、きっともっと後悔する。なんであの時、あんなものにしがみついてたんだろうって」
「…あんた。見た目と違って、意外に肝が据わってるな」
「そう? そうかな」

あんなもの、か。
NO.6の住人でありながら、そう言いきれるあんたの強さは何なんだ。

胸中で呟き、くすりと笑む。
天井から入ってくる風が、肩まで伸びたネズミの髪をふわりと揺らした。
「わかった。あんたの悪いようにはしない」
決意のように紫苑の瞳を覗いて、静かな声音でネズミが言う。瞳から惑いは消えていた。
「うまくやるさ」
「ネズミ?」
「ここで一人で待てるか?」
不敵な笑みを浮かべた唇で告げ、ネズミが踵を返す。
「どこに行くんだ。僕も…!」
「いや、あんたはここで待て」
きっぱりと言われ、その顔に決意めいたものを見て、紫苑が思わず両手でネズミの腕を掴んだ。
「一人で危険に飛び込む気なのか! だめだ、そんなこと!」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃない、一人じゃだめだ!」
「必ず帰ってくる」
「ネズミ…」
不安に揺れる瞳を諭すように見つめて、ネズミの手がそっと紫苑の肩にかけられる。見つめてくる濃灰色の瞳は、初めて見るほど静かな深い色をしていた。
一瞬波立った紫苑の心が、ゆっくりと、やさしくなだめられていく。
「大丈夫だ。必ず、あんたのところに帰ってくる」
ネズミのきれいな指がそっと紫苑の髪を撫で、その身体を腕の中に包むように抱き寄せる。
ほんの少し踵を上げると、紫苑の額に誓いのようにキスをした。
「約束する」
紫苑が目を閉じ、はにかむように微笑んだ。頬が桃色に微かに色づく。ゆっくりと瞳を開いた。
「わかった。きみを信じる」
「ああ」
「けど、無茶はしないでくれ」
「わかってる。ま、あんたほどの無茶なやつなんて、そうそういないけどな」
「ネズミ…!」
「夜には戻る」
そう言い残すと、もう一度紫苑の腕を引いて頬に口づけ、素早く背を向けた。紅潮している横顔を紫苑に気付かれたくなかったのだろう。
再び地中に埋まった煙突をよじ昇り、地上へとひらりと踊り出る。
見れば、予想通り、治安局の局員たちは丘を登り始めているところだった。
その視界に入るように、ネズミが猛然と走り出す。
追っ手を撹乱するためには、少なくともこのあと半日、ネズミは走り回らねばならなかった。
だが、紫苑がいる。
それだけで、地球の一周でも全力疾走できそうなほど、ネズミの全身は躍動し、心は躍っていたのだった。



(つづく)





サイトについて

アニメ一話を見て速攻で原作全巻揃え、坂を転げ落ちるようにNO.6の世界にハマってしまいました…!
紫苑とネズミがいとしくてたまりません…!
ピクシブでちょこちょこと小話を書いてみたのですが、結局それでは足りずについにブログサイトを開くことにしてしまいました。
自分の本気がこわいです(笑)
私の住んでるところではまだ最終回の放送前なので、ひとまずアニメ最終回を見てから、またいろいろ書きたいなあ。
DVDも予約したし、もうすぐサントラも出ますよね!
もう楽しみでしかたがありません。
感想などもここで書いていけたらいいなあと思っています。 
どうぞよろしくお願いします(#^.^#)

はじまりの朝と、さよならの月夜 (1)

嵐の後の空は、抜けるような青空だった。台風の過ぎ去った空の色。
陽の入る窓、カーテンの隙間から覗くその青さを、たぶん一生忘れないだろう。
思いながら、ネズミは紫苑のベッドをそろりと降りた。起こさないようにと細心の注意を払いながら。
そうして、おそるおそる振り返れば、ベッドの上では両手両足を存分に伸ばして、紫苑が軽い寝息をたてていた。
思わず、笑いがこみあげる。
(リラックスしすぎだろう。まったく、あんたには緊張感ってもんがないのか)
VCを匿った上、そんな『犯罪者』の隣でここまで安眠を貪れるとは。
こいつ、天然な上に、かなりの大物だな。
感心したように胸で呟き、ネズミが腕を組んであきれたように紫苑を見下ろす。
…いや、違う。馬鹿なんだ。きっとそうだ。
でなけりゃ怪我をしたVCを、それと知って庇ったりしない。
正常な思考回路の持ち主なら、そんな面倒事に巻き込まれるのはまず御免だろう。
それに、回避するチャンスもあった。
食事を取りに行った時に、母親を通じて治安局に連絡を取る時間はあった筈だ。
ネズミ自身も、その危険性は充分考慮していた。いつでも窓から再び飛び出せる、心の準備はあったのだ。
が、どうしてだか紫苑はそうしなかった。
逆に、空腹のネズミに、チェリーケーキとシチューを運んできてくれた。
この世に不幸なんてものは存在しないと信じている、クロノス育ちのおぼっちゃん。
血反吐を吐くほどの苦しみも、胸を突き破り、骨が軋むほどの悲しみも知らない。
そして、たぶん、これからも。
(…だが。あんたはそれでいい)
心で呟いて、そこを離れる。
そんなものとは無縁でいい。
苦しみにも悲しみにも、耐え難い痛みにも打ちのめされることなく、穏やかな日々を過ごしていってほしい。
その天然のまま、笑っていてほしい。どんなときも。
思い、口元に微苦笑を浮かべる。
(らしくない)
他人にそんな感情を抱くのは、初めてのことだ。
他人に抱く甘さは命とりだと、ネズミを育てた婆はいつもそう言っていた。
生き延びたければ、他人をあてにしてはしけない。信じてはいけない。弱みを見せてはいけない。決して。
そして、その言葉はいつの時も正しかった。だから、守った。守らねばならなかった。
だのに、ずっとかたくなに守ってきたその戒めが、ここにきて崩れた。
他人を信じ、弱みを見せた。
たとえば食事に睡眠薬が混入してある可能性もあったのに、ネズミは毒味もせず、あっさりを全てたいらげてしまったのだ。
その上、部屋の住人を放ったらかして、とっとと先に寝入ってしまった。
何たる警戒心の無さ。自分で呆れる。
かなりどうかしていた。今までのネズミなら、まず在り得ない。
(だがそれも。ここまでだ)
ネズミの表情がにわかに厳しくなる。
室内のセキュリティは、昨夜のままオフになっている。それを確認した上で、ネズミは静かに窓を開いた。
昨夜紫苑が叫んでいたバルコニーへと駆け出し、ひらりと手すりを越えて飛び降りる。そのまま邸を囲む森の中へと、素早く身を翻した。一気に駆ける。
ここから先は、また命がけの逃走だ。
生きるための戦いが開始された。
自然と口元が引き締まる。
この森を抜けて、地下水路の入り口まで逃げ込めば、当初の予定通り活路は開ける。
もっとも水路はすべてNO.6の地下で繋がっているわけではないから、西ブロックに向かう道中で何箇所かは地上に出るしかない。
逃走経路を頭で計算しながら、注意深くネズミが辺りの様子を伺う。はっと緊張が走った。
丘の下に治安局の車が数台見えた。こちらに近づいている。
まだ早朝だというのに出勤とは。ご苦労なことだ。
ネズミが、奥歯をぎりっと噛み締める。
生きてやる。生き抜いてやる。
何としても、このNO.6から生きて脱出する。
あんなやつらの好きにされてたまるか。
(生きて、おれは必ずこのNO.6に報復する…!)
濃灰色の双眸が空を見上げる。
絶望していたのが嘘のようだ。不思議なほど身体中に力が漲っている。傷の痛みももうほとんど感じない。
一夜の安息と、食事と、手厚い介抱。
それがネズミを生き返らせた。
太陽さえ、昨日までとは違って見える。
地上に連れ出され、久しぶりに浴びた陽の光はじりじりと肌を刺し、目を射抜くように凶々しく思えたのに。
今、森の中を疾走するネズミの肩に降り注ぐ光は、眩しくて、あたたかい。
あいつ、みたいに。


忘れない。
あんたの手のぬくもり。
ずっとおぼえてる。
一緒に笑ったことも。
ずっと。この先。
一生忘れない。


誓いのように、走りながら胸に手を置く。
だが、後悔もある。
災厄を自ら呼びこんだあんたは、今後何らかの代償を負うことになるだろう。失うものもあるかもしれない。
せめて、それが最小限で済むように。
一刻も早く、此処を去らねば。
VCを匿った者に、治安局はどんな処罰を与えるだろうか。いくら何でも、クロノスの住人をいきなり強制連行はしないだろうが。
生活水準の格下げは、余儀なくされるかもしれない。エリートコースから外れることにもなるだろう。
おれが、自分が生きるためにしたことが、あんたの一生をメチャクチャにしてしまったかもしれない。
考えて、ネズミの表情が曇る。
詫びてすむことじゃないが。
(…ごめんな…)
脅されたから仕方がなかったとか、殺されるんじゃないかと怖くて家族にも言えなかったとか。
どうか、うまく言い逃れてくれ。
ああでも、あんた馬鹿だからな。
馬鹿正直に言っちまいそうでヤバい。
けがをしてたから。同じ年頃の子供だったから。あとは、理由は自分でもよくわかりません、とか。
そんな間抜けな答えをしちまいそうだ。
嘘がつけない純粋培養ぼっちゃん。天然で、お人良し。
だけど。
どうか無事でいてくれ。

(……紫苑)

と、ネズミが心でその名を呟いた瞬間。
まるで答えるように、不意に誰かに呼ばれたような気がした。
はっと立ち止まり、表情を険しくして辺りを伺う。ネズミの五感が、接近してくる気配を察知した。
クロノス区画内の森はよく手入れされていて、無駄に生い茂ったりしていない。追跡してくるものがあれば、かなり遠くのものでもネズミなら肉眼で発見できる。
だが、違う。
治安局の者が近づいてきたのなら、全身の体毛が逆立つほどの嫌悪で気付く。高性能のレーダーより正確だ。
(違う。これは)
とりあえずは敵のものじゃない。物々しさも殺気も感じない。
だが、だったら、いったい。
クロノスの住人が、まさかこんな早朝に森の中をピクニックか? まさか。
考えて、さらに警戒を強める。ナイフの刃のように濃灰色の双眸が鋭くなった。

「………は?」

その瞳が一瞬にして丸くなった。

まさか。
うそだろ?

ネズミが呆気に取られたように近づいてきた人影を見る。かなり間の抜けた顔になっていたに違いない。
「おーい…」
森の中をよたよたと駆けてくる小さな影が、呑気にネズミに向かって笑顔で手を振っていた。
逆光とはいえ、誰だかすぐに思い当たった。
が、待て。
なぜ、此処にいる?
「おーい、ネズミー」
はあはあと息をきらしながら、ネズミの前で息を整える少年を、ネズミは未だぽかんとした顔で見つめていた。
「あーよかった間にあった」
「…はあ?」
「きみ、足早いな。ぜんぜん追い付かなくて、どうしようかと思った」
「……」
追い付かなくて? 
つまり、追って来た、と?
「あ、これ」
「これ?」
「くつ。履いてなかっただろ。ぼくのだけど、サイズ同じくらいかと思って」
「あ、あぁ?」
目の前ににゅっと差し出されたスニーカーに、ますますネズミが呆然となる。
くつ? 持ってきた?
何のために。
「あと、抗生剤。やっぱり飲んでおいた方がいいよ。傷にさわるから。はい、飲んで」
「…おい」
「熱はもうなさそうだな。あ、そうか。薬飲むのに水がいるね。ちょっと待って」
ネズミの額にこつんと自分の額を当てて熱を計り、一人納得して紫苑が背中に背負っていたリュックを降ろした。中から水筒を取り出す。
というか、なぜリュックを背負っている?
「いや、待ってじゃなくて。あんたな…!」
さすがに呆然としている場合ではないと気付いて、ネズミが、コップに水を注ごうとしている紫苑の手を掴んだ。
「じゃなくて! なんで追っかけてきたんだ、あんた!!」
「なんでって?」
「自分が何してるかわかってんのか!?」
「えっ?」
きょとんとなる瞳に、苛立つようにネズミが声を荒げる。両手で細い肩を掴み、揺さぶる。
「え、じゃないだろう!わかってんのか、VCを匿っただけでもあんた充分やばいって、ゆうべもそう言っただろう!? なのに、こんな」
「だって、逃げるのにせめて靴はいるだろう?」
当たり前のように言われて、ネズミが思わず頭を抱えた。
「…ぁああああ!! なんであんたは、こんな時まで天然なんだ! いったいどこまで馬鹿…」
そこまで言って、はっとなる。冷たい汗がネズミの背を伝った。
治安局の車だ。すぐそこまで接近している。
そうだ、近づいてきていたのだ。すっかり忘れていた。
「…チッ」
舌打ちと同時に、ネズミは反射的に身を翻していた。ほとんど無意識に紫苑の腕を引っ張る。
「ネズミ…!?」
「っ、ちっくしょう…! ともかく、あんたも来いっ!!」
リュックを背負ったこの格好で、紫苑を森の中に放置していけば間違いなく怪しまれる。
かと言って、連れて逃げるのも間違いなく怪しげな状況ではあったけれど、この場合致し方なかった。
ネズミの思考回路は、突然現れた紫苑によって完全に混乱していたのだ。
耳元で怒鳴られた紫苑は、なぜかやけに嬉しそうに笑んで、うん!と力強く肯いた。
笑ってる場合か、まったく。あんたどこまでも大物だな。
いや、違う。だから馬鹿なんだって。救いようがない天然。
それより現状をどうする。いや。どうするも何も。
過去に、こんな馬鹿げた危機的状況には遭遇したことがない。
内心で静かにパニックを起こしながらも、それを隠すように、乱暴に紫苑の細い腕を引っ張り、勢いよく丘を駆け上る。
そうして、地下水路とはまったく逆の方向に走っていることにネズミが気がついたのは、それからしばらく経ってからのことだった。


(つづく)



tag:NO.6

眠りにつく前に

「王妃は彼に、おまえは自分が誰にものを言っているか忘れてしまったのかいと尋ねた。ハムレットはこう返した。『ああ!忘れることができればどんなにいいことか! あなたは王妃です。そして、あなたの夫の弟の妻です。そして、私の母上です。そうでなければよかったのに』。それを聞くと王妃は、『そうかい。もしそんなに私を馬鹿にするんなら、ちゃんとおまえと話せる人をここに呼んでこよう』と言い、王がポローニアスを呼んでこようとした」
 そこまで読んで、開いたままの本を胸の上にそっと置く。紫苑は欠伸を噛み殺した。
 そして、眠そうに目をこすって、横たわった肩のあたりに留まる小ネズミに懇願する。
「…続きは明日。そろそろ寝かせてくれよ、ハムレット」
 白い小ネズミはチチッと鳴いて、微かに首を横に振ったようだった。紫苑が、溜息をついて苦笑を浮かべる。
「ええっ、まだ読むのか。さすがに、もう勘弁。続きは明日必ず読んでやるから。な?」
 なだめるように葡萄色の小さな目の間を指先で撫でられ、ハムレットと呼ばれた小ネズミは、チチッと鳴いて本棚の上へと退いた。
 どうやら聞き分けてくれたらしい。紫苑は微笑を浮かべると、ベッドの上ではあ…と一つ息を漏らし、目を閉じた。
 今日は一日、イヌカシの所で犬洗いの仕事をした。おかげで、くたくただ。もっとも、心地よい疲労感ではあったけれど。
「それで?」
「ん?」
 すぐ隣から発せられた声に、紫苑が薄目を開く。紫苑の好きな美しく甘いテノール。
「あんた。いつまでここにいる気だ」
「ここって?」
「読書が終わったんなら、自分の寝床にとっとと戻れ」
 言って、きれいな顎で古びたソファを差し示す。
 声は良いが口は悪い。力河の言うことは確かに当たっている。
「眠いんだ」
「だから、眠いなら」
「今日はここで寝る」
「って、あんたなあ…!」
「いいじゃないか、ネズミ」
「ちっとも良くない。狭い。そもそも、俺のベッドまで来て、わざわざ本を読むことはないだろう、あんたも」
「君も本を読んでいたから」
「それが理由か」
「君の隣に寝そべって、僕も本を読んでみたくなったんだ」
 その言葉に、ネズミがいまいましげに眉間に皺を寄せた。
「迷惑だ」
「一人で読みたかったのか?」
「当たり前だ。気が散る。あんたのへたくそな朗読のおかげで、俺の貴重な読書タイムが台無しだ」
 憮然とした横顔に、それを見上げて紫苑がくすっと笑んだ。
「聞いてたんだ」
「こんな真横で読まれたら嫌でも聞こえる」
「うるさかった?」
「当然」
「でも、やめろって言わなかった」
「あ?」
「嫌ならやめろって怒るだろ。ネズミ」
 屈託無く言われて、ネズミが呆れたように溜息をつく。
「…で? それと、あんたが俺のベッドから立ち退かない理由とどんな関係がある?」
「同じかなって」
「は?」
「だから、ここで寝る。おやすみ」
「ちょ、待て、おい、紫苑」
 だから今、怒っているだろう。何がどう同じなんだまったく。だが、意義を唱える言葉の前に、慌てたような間抜けな声を返してしまった。
 怒鳴るタイミングを逃して、ネズミの眉間の皺がますます深くなる。
「もう今日はくたくたなんだ。動くの、かったるい」
「すぐ目の前のソファまでだろうが。3歩もあれば充分だ」
「その3歩が面倒なんだ」
「どれだけ怠け者なんだ、あんた」
「君が抱いて運んでくれるならいいけど」
「…あのな」
 心底呆れたような顔に、くすくすと肩をすくめて紫苑が笑う。ネズミがその顔にフンとそっぽを向いて、吐き捨てた。
「馬鹿馬鹿しい。どうして俺があんたにそこまでサービスする必要がある」
「うん。そうだね」
 他愛もない言葉遊び。戯れ。
 心地よい穏やかな空気が部屋を満たしている。ストーブの明かりにも似たあたたかい、それ。
 二人のやりとりを書棚の上で見守っていた小ネズミたちが、声を潜めて小さくチチッと囁き合った。
 パチパチとストーブの火のはぜる音だけが、静かな部屋に響いている。
 憮然としながらも、再び枕の上で本を開いたネズミの肘に、紫苑が頭を寄せていく。本に没頭し始めたのか、ネズミはもう何も言わなかった。
 とろりと半分に閉じかけていた紫苑の瞼が、睡魔との戦いに負けてゆっくりと閉じていく。
 ややあって、薄く開いた唇から寝息がこぼれた。
(……わずか一秒で爆睡とは。器用だな)
 傍らで、早くもくうくうと可愛い寝息を立て始めた紫苑に、ネズミが我知らずと笑みを漏らす。
 見下ろせば、そこに子供のような紫苑の寝顔がある。ネズミは、濃灰色の双眸をやさしく細めた。

 4年前の嵐の夜を思い出す。
 この4年の間に、何度も何度も思い返した。
 あの夜。そして、嵐が明けた朝。
 はっと眠りから覚めたネズミの隣で、紫苑はこんな風に安らかな寝息をたてていた。それはもう驚くほど無防備に。
 呆気に取られた。
 紫苑ではなく、自分自身に、だ。
 生きた人間の傍らで安眠を貪ったことなど、かつて記憶にすらない。
 そんなネズミが、出会ったばかりの他人の体温の傍らで、泥のように眠りに落ちた。夢も見ないほど深く。
 逃亡と怪我のため、極度の疲労状態だったことを差し引いても、在り得ないことだった。

 読みかけの本を閉じ、そっと腕を伸ばしてテーブルに置いた。紫苑の胸の上にある本も取り上げ、同じようにする。
 紫苑を起こさないように細心の注意を払っている自身になど、まるで気づきもせず。
 そうして、枕に肘をつき、身体を横にして紫苑の寝顔を見遣った。
(本当に子供みたいに無防備に眠るんだな、あんた…)
 年齢よりも幼く見える童顔は、眠っているとますます幼く、あの夜とそう大して変わらない気がする。
(なかなかの間抜け面だ)
 見つめて、くっくっと喉元でネズミが笑った。
 ストーブのオレンジの炎が映り込み、紫苑の輪郭をそっとなぞる。
 やわらかな面立ち、やわらかな髪、やわらかな頬。
 やわらかそうな唇。
(……)
 光沢のあるきれいな白い髪をそっと撫で、頬の赤い痣を親指の腹で辿って、額にかかる前髪を指先でそっと上げさせる。
 滑らかな額に唇を寄せた。それから頬に一つ。
 薄く開いた唇にも、掠めるように一つ。
 ママの代わりに、おやすみのキスを。
「良い夢を。……紫苑」
 囁き、一度離れ、もう一度、啄むように口づける。
(…これは、ママの代わりじゃないからな)
「…ん………ネズミ………」
 紫苑が夢の中で幸せそうにその名を呟くと、ころりと身体を返し、甘えるようにネズミの胸へと額を寄せた。
 薄い紫苑の背を抱き寄せ、ネズミもまたゆっくりと目を閉じる。
 腕の中の紫苑のいとしい体温は、あの夜とはまた違う安らかで幸福な眠りに、瞬く間にネズミをも誘っていった。



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。